ゲーム向け3Dモデルを生成するTripo AIが総額約4億4,600万ドル調達
中国発のTripo AI(運営会社VAST)は、文章や画像から立体形状と表面の質感を持つ3Dモデルを生成するAIを開発する2023年設立の企業である。ゲーム、VR、製造、ロボット開発などで使う3Dデータの作成を短時間化する。
同社は2026年9月1日、シリーズBとB+で総額約30億元(約4億4,600万ドル)を調達したと発表した。MPCiが主導し、Perfect World、ThunderSoft、CICCなどが参加した。資金は3D基盤モデル、データ、計算設備、商用化に充てる。
ゲームや製造で使える3Dデータへの商用化
画像から立体物を生成できても、表面を構成する面の並びが不規則だと、そのまま制作には使いにくい。人物の関節を動かす、形を修正する、ゲーム向けにデータ量を抑えるといった後工程で、面を並べ直す「リトポロジー」が必要になるためである。同社が資金調達と同時に公開したP2.0 Previewは、編集やアニメーションに向く四角形ポリゴンを生成段階から出力し、この手直しを減らすことを狙う。
投資家にはPerfect World、Yanqu Games、37 Interactive Entertainmentなどのゲーム企業に加え、組み込みソフトウェアを手掛けるThunderSoftが名を連ねる。調達資金だけでなく、生成した3Dモデルをゲーム、端末、産業システムへ組み込む販売・導入経路を広げる構成である。ただし、各社との個別契約や売上への寄与は公表されていない。
日本との接点では、運営会社VASTがソニーの空間再現ディスプレイと事業提携している。Tripo AIで生成したモデルを裸眼立体表示し、展示、小売、教育、工業デザインで活用するほか、ソニー製ハードウェア向けの専用プラグインも開発する。当社メディアでも以前、ワールドモデルの主要企業と技術動向を取り上げた。Tripo AIは将来の世界生成を見据えつつ、まず個別の3D資産を既存の制作工程へ渡す部分を製品化している。
形状を空間全体で生成し、編集可能な面構造へ変換
3D生成では、入力画像の特徴を読み取り、見えていない背面を含む立体形状を推定する。同社の研究モデルTripoSGは、形状をいったん圧縮された三次元表現へ変換し、乱れた初期状態から正しい形へ連続的に近づける「Rectified Flow」を用いる。文章のように頂点を一つずつ並べるのではなく、形状全体を同時に整えることで、入力画像との対応と細部の再現を高める設計である。
学習には約200万件の品質をそろえた3Dデータを使う。物体の内外を表す符号付き距離場、表面の向きを示す法線、距離場の滑らかさを保つ制約を組み合わせ、穴や凹凸を含む形状を復元する。生成後は等しい値を結ぶ面を取り出してポリゴン化し、色や材質の情報を付けて一般的な3D制作ソフトへ渡す。
最新のP2.0 Previewでは、正面、左右、背面の最大4画像を使って各方向の形をそろえ、細部には面を多く、平面には少なく配置する。三角形は500〜5万面、四角形は500〜2万5,000面の範囲で指定できる。四角形の辺が形状に沿って流れるため、変形や編集を行いやすい。一方、P2.0の詳細な学習方式は公開されておらず、複雑な人物や機械部品で修正がどこまで減るかは実制作での検証が必要である。
3D資産から動的なワールドモデルへの拡張
同社は資金を、3Dネイティブ基盤モデルと学習データ基盤、学習・推論用の計算設備、製品開発に投じる。短時間で作る単体の人物や小道具から、物体同士の関係や時間変化を扱う世界モデルへ研究を広げる方針である。ソニーとの提携では、対応機器と用途の拡大も計画する。
創業者兼CEOのSimon Song氏は、三次元表現は物理世界の基本構造であり、AIが文章や画像を越えるにつれて空間推論が重要になるとの見方を示した。大型調達を計算量の拡大だけでなく、編集可能なデータとして安定して出力し、ゲームや製造の既存工程へ定着させられるかが焦点となる。
参考文献:
※1:Tripo AIによるシリーズB・B+総額30億元の調達発表(リンク)
※2:Tripo AIによるソニーの空間再現ディスプレイとの事業提携発表(リンク)
※3:当社メディア「AIは『世界を描く』から『未来を試す』へ ワールドモデル最前線」(リンク)
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