合成着色料に代わる天然食品色素を酵母発酵で作るPhytolonが2,360万ドル調達
Phytolonは、イスラエルを拠点とするフードバイオ企業である。同社は、パン酵母を用いた発酵技術により、食品向けの天然色素を生産している。代替肉や新規タンパク質ではなく、菓子、飲料、乳製品、ベーカリーなど幅広い食品に使われる「色素」を、植物栽培に依存しにくいバイオ製造へ置き換えることを狙う。
今回同社は、2,360万ドルのSeries B資金調達を実施した。ラウンドは非公開の戦略投資家が主導し、既存投資家のMillennium Foodtech、NextGen Nutrition、Colorcon Ventures、Yossi Ackermanも参加した。調達資金は、発酵由来の天然食品色素を米国市場で商用展開するための販売・供給体制の拡大に充てる。
フードバイオは食品素材の生産基盤へ
今回のポイントは、フードバイオの対象が、代替肉やタンパク質のような「主役食材」から、食品メーカーが日常的に使う素材へ広がっている点である。色素は食品の味や栄養を直接担うわけではないが、商品の見た目、ブランド体験、購買判断に関わる重要な素材である。Phytolonは、この基盤素材を発酵で安定生産しようとしている。
背景には、合成着色料を見直す動きがある。CNNは2026年2月、米FDAが天然食品色素のbeetroot redを承認し、spirulina extractの用途拡大も認めたと報じた。FDAも、beetroot redの食品用色素としての使用承認と、spirulina extractの承認用途拡大を発表している。
ただし、天然由来であれば無条件に安全というわけではない。FDAはbeetroot redとspirulina extractについて、異議申し立ての評価に伴い発効日を遅らせた一方、安全性判断自体は変わらないとしている。こうした規制対応の中で、食品メーカーには、天然由来で、品質や供給が安定し、既存製品に使いやすい色素の選択肢が求められている。
パン酵母で植物由来色素を作る
同社の中核技術は、パン酵母を使った発酵による天然色素の生産である。公式技術ページによれば、同社はパン酵母の発酵プロセスを用いて高純度の天然色素を生産している。対象となるのは、ビートルート、サボテン果実、ピタヤなどに含まれるベタレイン系色素である。
従来の天然色素は、植物から抽出するため、天候、収穫量、産地、品質ばらつきの影響を受けやすい。同社の方式は、植物を大量栽培して抽出するのではなく、発酵タンク内で色素を作るため、農業条件に左右されにくい生産を目指せる。同社はこれを、農業に依存しない色素生産として位置づけている。
製品面では、同社の色素は赤、紫、ピンク、オレンジ、黄色など複数の色域に展開できる。公式製品ページでは、熱安定性、幅広いpH対応、味への影響がないこと、安定供給、クリーンラベル対応などを特徴として掲げている。食品メーカーにとっては、単に「天然」であるだけでなく、製造工程や既存レシピに組み込みやすいことが重要になる。
メーカーが使える価格・品質・供給量を満たせるか
今後の焦点は、同社が発酵由来の天然色素を、食品メーカーが使える価格・品質・供給量で量産できるかである。同社はまず、FDAに承認されたbeetroot redを起点に、米国市場での商用展開を進める。Green Queenによれば、今回の資金はCPG企業や販売パートナーへの供給拡大に使われる。
食品色素市場では、合成着色料の規制や消費者意識の変化により、天然由来の代替素材への需要が高まりやすい。一方で、天然色素は合成色素に比べて、熱やpH、保存安定性、コストの面で課題を抱えやすい。同社の技術が注目されるのは、発酵生産によって、天然由来でありながら工業的に扱いやすい色素を作ろうとしている点にある。
フードテックは、最終食品そのものを作る領域から、食品メーカーの製造基盤を支える素材産業へ広がっている。同社取り組みは、色素という小さな素材を通じて、食品産業のサプライチェーンをバイオ製造へ置き換える動きといえる。
参考文献:
※1:Phytolon Raises $23.6M to Launch Yeast-Derived Beetroot Red Dye for Food( リンク)
※2:同社HP( リンク)
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