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船舶自律航行プラットフォームのOrca AIがシリーズBで104億円を調達。AIと独自のデバイスで新分野にも参入へ

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船舶の自律航行プラットフォームを開発するイスラエルのOrca AIは2025年5月6日、シリーズB資金調達ラウンドでの$72.5m(約104億円)の確保を発表した。

Orcaは2018年、Yarden Gross CEOとDor Raviv CTOによって設立。前述の通り、イスラエル発のスタートアップだが、リクルートページの情報によると世界各地に拠点を有すると見られる。

NYKと長く連携

実用化のスピードという点で、船舶の自律航行は車の自動運転よりも早く開発や導入が進められてきた。21世紀に入り20年を越えた今、各種センサーの能力が上がり、またAIの台頭もあって、船舶の自律航行のレベルはこれまで以上に高まっていくと考えられる。

正式社名に「AI」が入っているように、OrcaもAIを取り入れたプラットフォームを構築。次の4つのプロセスで、開発を行う。

  1. データ収集
  2. データのラベリング
  3. 継続的なアルゴリズム評価
  4. 展開

最初のデータ収集は、200隻以上の船舶により5年間のデータを収集。映像の他、GPS、水深、風などさまざまなデータを蓄積している。続く、2、3のプロセスで登場するのがAIだ。ここで、物体の識別やナビゲーションをトレーニングしていく。

また、4の展開後もフィードバックを継続するプロセスとなっている。

Orcaはソフトウエアだけでなくハードウエアも開発。「SeaPod」がそれであり、ウェブサイトに載せられた写真や動画を見ると、複数のレンズで広角の監視を行っている。光学センサーとカメラの機能を兼ね備えたように見える。

Orcaが公開する技術紹介動画

SeaPodが得た情報をAIが分析して、船舶のナビゲーションを実施。また、海運会社のオフィスなどから、人による監視も可能だ。

なお、Orcaは設立後、間もない時期から日本郵船(NYK)との協業を行っている。2021年9月には、OrcaのシステムをNYKの船舶に搭載したとの発表があった。

「船舶におけるAIの潜在能力が解き放たれた」とCEO 

シリーズBは、プライベートエクイティ(PE)ファームが主導した。資金は、プラットフォームのさらなる開発に利用するとともに、防衛分野への参入にも使われる見込みだという。

CEOのGross氏は、次のようにコメントした。

「Orca AIでは、AIが海上で人間の意思決定をサポートする際に何が可能になるか、その限界を常に広げている。過去2年間で、船舶はクラウドへの接続がますます進み、大規模なデータ収集が可能になり、AIの潜在能力が解き放たれた。

Orca AIはこの変革をリードし、船舶をよりスマートで安全、そして自動的にする、高度なAI技術を導入した。AIとコネクティビティの進歩が、海上運航の未来をどのように生み出すのかを理解いただいた投資家の方々に感謝している」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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