量産可能な金属3Dプリント技術を開発するFabric8Labsが5,000万ドルの資金調達を発表
Fabric8Labsは、電解プロセスを用いた金属3Dプリンティング技術「ECAM」を開発する米国企業。室温で高精度な金属構造を直接形成でき、後加工を大幅に削減できる点が特徴。主な用途は、AI・HPC向け冷却部材、RFアンテナ、パワーエレクトロニクス向けインターコネクトなど。高密度化が進む電子部品分野で、従来加工では難しい構造を量産レベルで提供している。
同社はNEAとIntel Capital主導で5,000万ドルを調達。既存投資家のLam Capital、TDK Venturesらに加え、SK hynixやMarunouchi Innovation Partnersなどが新たに出資。資金は米国内の製造能力を年500万個から2,200万個へ拡大する設備投資や人材強化に投じる。AI/HPC、無線通信、パワーエレクトロニクス向け量産案件への対応を加速する方針。
AI・HPC、5G、パワーエレクトロニクスの分野では、デバイスの高密度化によって、より高効率な熱管理構造や高性能アンテナ、電力部品が求められている。しかし、これらは複雑形状が多く、従来の加工技術では設計の自由度や量産性、コスト面に限界があり、市場の成長スピードに生産体制が追いつかない点が課題となっている。
同社は、微細金属構造を直接形成できる電解式3Dプリンティング技術「ECAM」を活用し、複雑形状の部品を一工程で製造可能にすることで、設計自由度と生産効率を向上させている。熱管理部材や3Dアンテナなど次世代デバイス向け構造を量産レベルで提供しつつ、設備拡張により量産需要に対応できる体制も整備し、市場の技術要求と供給能力のギャップ解消を図っている。
ECAMによる微細金属構造の室温造形技術
同社の電解式3Dプリンティング技術「ECAM」は、金属イオンを基板上に選択的に析出させて積層する独自プロセスを採用している。レーザーや高温溶融を用いないため熱影響が小さく、室温で高精度な造形を実現する点が特徴で、金属粉末方式に比べて安全性と寸法精度に優れる。
ECAMは、微小チャンネルや三次元アンテナ、複雑な放熱構造など、従来加工では困難だった形状を一体で形成できる。部品点数の削減や後加工の最小化が可能となり、設計の自由度が大きく向上する。これにより、AI・HPC向け冷却構造やRF部品など、高性能が求められる領域でも有効性が高い。
また、同社は造形モジュールを標準化し、製造ラインの拡張を容易にすることで量産性を高めている。材料ロスの少ないプロセスと後工程の削減によりコスト効率も向上し、年間数千万個規模の供給に対応可能な生産体制を構築している。
ECAM Copper Structures on Silicon Packaging
今後は米国内製造拡張と先端デバイス向け量産需要に対応
同社は今後、米国内の製造能力を年間500万個から2200万個規模へ拡大し、AI/HPC向け熱管理部品やRF、パワーエレクトロニクスといった成長領域の量産需要に応える方針である。設計・品質・プロセス工学の専門人材を強化し、試作から量産まで一貫して対応できる生産体制を整備することで、顧客の開発スピードに適合した供給網を構築する考えである。
CEOのJeff Herman氏は、「今回の投資により、高成長・高速変化する分野においてECAM技術を拡大できる。重要部品の設計・製造・供給のあり方を変革し、顧客が迅速に革新を進められるよう支援する」と述べている。また、量産プロセスの最適化や歩留まり向上、コスト削減にも取り組み、サプライチェーンの強靭化を進める方針である。
参考文献:
※1:Fabric8Labs Secures $50M to Expand U.S. Advanced Manufacturing Capacity( リンク)
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