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網膜画像をAIで解析し、眼疾患や全身疾患リスクを早期発見するOptain Healthが2,600万ドルを調達

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Optain Healthは、AIで網膜画像を解析する技術を提供するヘルスケアスタートアップ。瞳孔を開かずに撮影できる網膜カメラとAIソフトを組み合わせ、糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性(AMD)などの主要な眼疾患や心血管疾患リスクを自動でスクリーニングする。これにより、眼科の現場での診断を効率化し、見逃しを減らしてケアの質を標準化することが可能となる。

2025年9月10日、同社はシリーズAラウンドで2,600万ドルを調達した。本ラウンドはInsight Partnersが主導し、Memorial Hermann Health System、Northwell Holdings、Novant Health、Ohio State Wexner Medical Center、UPMC、Informed Ventures、Lumio Capital、Meridian Ventures、UniQuest Extension Fundなどが参加した。これにより、米国でのエンタープライズ導入拡大と、国際展開の加速を目指す。

AIを用いて眼疾患を早期発見

世界的に眼疾患は増加傾向にあり、糖尿病網膜症や緑内障などは初期症状が乏しいため発見が遅れ、失明に至るケースも少なくない。診断精度は医師の経験やスキルに左右されやすく、見逃しや診断のばらつきが課題となっている。さらに、眼科医の数が限られている地域ではスクリーニングの受診率が低く、早期介入の機会が失われている現状がある。

同社の提供するAIを用いた解析システムは疾患の見逃しを減らし、判定のばらつきを抑えることで、診療の質を標準化する。これにより医療現場はリスクの高い患者を早期に把握し、適切なタイミングで眼科治療につなげることが可能となる。結果として、失明予防と医療費削減に貢献し、医療リソースの最適配分を実現することが期待されている。

100万枚以上の網膜画像で学習したAI解析技術

同社の技術的特徴は、網膜画像から疾患の特徴を自動抽出し、多層的に解析するディープラーニングモデルにある。100万枚以上の多民族データで学習されたアルゴリズムが、糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性(AMD)などの病変を画像レベルで検出し、心血管疾患リスクや生活習慣病の兆候も推定する。さらに、同社は「AIベースのオキュロミクス(オキュロミクス:眼の画像データから全身の健康状態や疾患リスクを読み解く学問分野)」という概念を掲げ、網膜の微小血管や組織変化を定量化することで、動脈硬化や心不全、糖尿病といった全身疾患の早期兆候を検出する研究を進めている。これらのアルゴリズムは査読付き学術誌で性能が報告されており、科学的に検証済みの技術である。

また、このAI解析を支える自動眼底カメラは、フォーカス調整や目の位置合わせを完全自動で行い、短時間で高解像度の網膜画像を取得できる。そのため、特別な訓練を受けていないスタッフでも容易に扱える設計となっている。既存の眼底カメラとも互換性があり、ソフトウェア単体での導入も可能であるため、医療現場への実装コストを抑えつつAI解析の活用範囲を広げている。

プライマリケアや欧州・アジア市場への展開を視野

同社は今回のシリーズAラウンドで、Insight Partnersをはじめ、Memorial Hermann、Northwell、Novant、Ohio State Wexner、UPMCといった米国の大手ヘルスシステム、さらにInformed Ventures、Lumio Capital、Meridian Ventures、UniQuest Extension Fundといったヘルスケア系VCから出資を受けた。これにより、米国内の広範な医療ネットワークで網膜スクリーニングプラットフォームを展開し、眼科クリニックに加えて、プライマリケアやオプトメトリーなどスクリーニング機会が限られている現場にも導入範囲を広げる計画である。

また、オーストラリアを拠点とした研究開発投資を強化し、欧州、中東、東南アジア市場への展開も視野に入れている。多民族・多地域データを収集してAIアルゴリズムの精度と汎用性をさらに高め、国際的な医療機器認証や規制対応を進めることで、グローバル規模での導入を加速させる狙いだ。

CEOのJeff Dunkel氏は「眼を通じた健康スクリーニングを、より速く、簡単に、そして公平に提供する」と述べており、今後はスクリーニングだけでなく、解析データと電子カルテや保険データを統合したリスク層別化や疾患予測モデルの開発にも踏み込み、予防医療や慢性疾患管理まで含めた医療全体の効率化を目指していくと見られる。




参考文献:
※1:Optain Health Closes $26 Million Series A to Bring Oculomics to Primary Care and Beyond (リンク

※2:Optain Health secures $26M for retinal imaging platform(リンク

※3:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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