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「エピジェネティック」スタートアップの米NewLimitがシリーズBで187億円を調達。目標は人の老化からの解放か

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米国のエピジェネティック関連スタートアップであるNewLimitが、シリーズB資金調達ラウンドで$130m(約187億円)を確保した模様だ。2025年5月6日以降、米メディアが報じている。

NewLimitは2022年、カリフォルニア州サンフランシスコで設立。投資家のBlake Byers氏、暗号資産取引所のCoinbaseでCEOを務めるBrian Armstrong氏、遺伝子研究者のJacob Kimmel社長が共同創業者となっている。

Brian Armstrong氏(Coinbaseのプレス向け資料より)

エピジェネティックとは?人の遺伝子をオフからオンに

タイトルや冒頭で記した「エピジェネティック」という言葉は、聞き慣れない。NewLimitの説明を交えながら記すと、次のようになる。

人の遺伝子は、電気製品のスイッチのように、オンになっているものもあれば、オフになっているものもある。NewLimitによると、それらを操作するのが「エピゲノム」と呼ばれる分子群だ。そして、人が老化するのはエピゲノム、エピジェネティックな環境が破壊されるからだという。

しかし、近年の研究でエピゲノムはリプログラミングでき、さらにオフの遺伝子をオンにすることができると分かった。これは細胞の変化や老化・疾患の緩和につなげられる。リプログラミング因子を一時的に活性化させるだけでも、神経障害や線維症などの緩和につなげられると、NewLimitは説明する。

NewLimit はエピジェネティックの分野において機械学習(ML)を活用しながらエピゲノムの編集・リプログラミング、単一細胞ゲノミクスにおける問題の解明を実施。また、最終的にはエピジェネティック医薬品を開発する。明言はしていないものの、オフィシャルサイトでの示唆やNewLimitに関する報道からは、人を老化から解放することが目標と見られる。

ちょうど2年前の2023年5月に同社は、シリーズA資金調達ラウンドで$40m(約54億円。当時レート)を確保した。

また、スタートアップはどの企業でも同じであるが、NewLimitも資金の他、人的リソースの確保に奔走。採用のキャッチフレーズは、「NewLimitは世界最高クラスの才能を求めている」となっている。

創薬したものを非臨床の試験実施へ

シリーズBはベンチャーキャピタル(VC)などが主導。その他、新規投資家にはGitHubの元CEOであるNat Friedman氏、Friedman氏と投資に参加することが多いエンジニア・起業家のDaniel Gross氏らが対応。既存投資家も、エンジェル投資を行うElad Gil氏、Y Combinator CEOのGarry Tan氏、Stripeの共同創業者兼CEOのPatrick Collison氏らが参加している。

資金の使途は明確にされていないものの、TechCrunchの報道によるとNewLimitの今後の動きとして、MLで創薬した中で有望なものを研究所内で試験したいと考えているとのことだ。

同じくTechCrunchの取材に、Kimmel社長はAIモデルの存在により実験が効率化、スピードアップできている点を述べている。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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