トンネル工事を自動化するThe Boring Companyが30億ドル調達
米国テキサス州のThe Boring Companyは、都市の地下に自動車用トンネルを建設し、渋滞を避けた移動網「Loop」を展開する企業である。掘削機だけでなく、壁面施工、資材・土砂搬送、遠隔監視まで一体で開発し、工事の高速化を目指す。
同社は2026年9月9日、シリーズDで30億ドルを調達した。アラブ首長国連邦(UAE)と関連する投資主体が主導し、Temasek、Sequoia Capitalなどが参加した。評価額は230億ドルで、掘削機の増産、人材採用、米国とドバイの事業拡大に充てる。
30億ドルを支える三都市の地下交通プロジェクト
調達を主導したUAE側とは、同国で総延長150km超のトンネル網を構築する提携も結んだ。これとは別に契約済みのDubai Loopは、第1期として6.4km、4駅を計画する。同社は現地でコンクリート製壁面部材の生産準備を進め、2026年後半の掘削開始を目指している。
ラスベガスでは、ホテルや展示場を結ぶVegas Loopを営業運行し、累計利用者が400万人を超えたとしている。ナッシュビルでは空港と中心部を結ぶMusic City Loopを建設中で、硬い岩盤に対応する掘削機を投入した。三都市はそれぞれ営業中、建設中、準備中であり、進捗段階は異なる。
当社メディアでも以前、建設現場の穿孔作業を自動化するAugust Roboticsを取り上げた。The Boring Companyは一つの作業ではなく、トンネル建設の工程全体を連続化しようとする点が異なる。今回、日本企業による出資・提携や、日本国内での事業計画は公表されていない。
掘削・壁面施工・土砂搬送を止めずにつなぐ自動化
トンネル掘削機は、先端の円形カッターヘッドで地盤を削り、油圧装置で完成済みの壁面を押しながら前進する。機体の後方では、分割されたコンクリート部材を円環状に組み、地盤を支える壁をつくる。従来は掘削と壁面施工を交互に行うため、部材の供給や組み立てが停止時間の要因となる。
同社のPrufrockは、掘り進みながら壁面のリングを組み立てる設計である。2025年5月には作業員をトンネル内へ入れずに連続掘削する実証を行い、2026年8月までに、約1.7トンの部材6枚を機械が選び、ミリメートル単位で配置する工程を自動化した。組み立て時間は1分未満としている。
掘削機は専用運搬車から直接発進・回収でき、立坑や大型クレーンを使う準備工事を減らす。電動車が壁面部材を運び、ベルトコンベヤーが掘削土を連続排出する。公表上の搬送能力は毎時990トン、想定する掘進速度は週4マイル(約6.4km)だが、後者はシステムの設計目標であり、各現場で達成済みの実績ではない。
UAEで150km超を展開し、掘削機と人員を増強
同社は調達資金を使い、掘削機と関連設備の生産を増やし、設計、製造、施工、運行を担う人材を採用する。Vegas Loopの延伸、Music City Loopの建設、Dubai LoopとUAEの新規計画を並行して進め、異なる地質や規制環境でも同じ工法を再現できるかが焦点となる。
創業者のElon Musk氏は、交通渋滞の解消を「究極のボス戦」と表現し、権力や資金があっても渋滞からは逃れられないと説明した。今後は、掘削速度の目標だけでなく、建設費、安全性、許認可、運行能力を実プロジェクトで示し、地下交通網を継続的に拡張できるかが問われる。
参考文献:
※1:The Boring Companyによる30億ドルのシリーズD調達発表(リンク)
※2:米証券取引委員会に提出されたThe Boring CompanyのForm D(リンク)
※3:The Boring CompanyによるPrufrockの技術説明(リンク)
※4:The Boring CompanyによるMusic City Loopの計画・建設状況(リンク)
※5:The Boring CompanyによるDubai Loopの計画・建設状況(リンク)
※6:当社メディア「建設現場から進むPhysical AI、August Roboticsが3,000万ドル調達」(リンク)
※7:The Boring Company「Prufrock - Autonomous Tunnel Ring Building」(リンク)
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