機能条件を入力して新規配列を生成するAIモデルと実験ループの融合
同社技術の基盤となるのは、膨大なたんぱく質配列と機能データを学習した生成モデルである。モデルはアミノ酸配列と機能の対応関係を統計的に捉え、目的とする働きに適した構造を推定できる表現を獲得している。これにより、既存の配列を改変するのではなく、機能の要件から新しい分子を直接生成する設計プロセスが実現する。
さらに、自然言語や機能条件を入力として扱えるインターフェースが整備されており、研究者は「安定性を高めたい」「基質特異性を変えたい」などの要求をモデルにそのまま伝えられる。モデルはこれを条件として配列生成に反映し、目的に適合した分子候補を自動提案する。これにより、要求仕様と配列生成が一体化した開発フローが成立している。
加えて、生成された配列は実験で検証され、その結果が再びモデル学習に組み込まれる仕組みが用意されている。これにより、実験データを通じて予測精度が継続的に向上し、特定用途向けの性能最適化も可能になる。生成・実験・改善の循環が確立することで、探索型より高速かつ高精度のたんぱく質設計が持続的に進む体制が整えられている。
開発領域拡大と高速検証体制の構築
同社は今回の調達を機に、生成モデルの適用領域を大きく広げる計画である。これまで医薬中心だった開発対象を、産業酵素、ゲノム編集ツール、材料用途へ段階的に拡張し、各領域で必要な特性を踏まえた専用モデル群の構築を進める。また、量産を見据えた品質評価やスケールアップ工程にも取り組み、研究用途から産業レベルの利用へ移行する体制を整える方針である。
さらに同社は大規模実験を自動化するための内部インフラを強化し、毎週数千〜数万規模の新規配列を検証できる生産ラインの確立を目指す。CEO Ali Madani 氏は「モデルを改良し続けるためのデータ供給力を拡大する」と述べており、生成した分子を継続的に評価できる“高速学習工場”を社内に構築する計画である。この基盤が整えば、用途別プロジェクトの立ち上げが一層加速すると見込まれる。