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AIを用いてタンパク質を設計するProfluent が、1億600万ドルの資金調達を発表

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Profluent は、AI を使って任意の機能を持つ新規たんぱく質を設計する技術を開発する企業である。ユーザーが「どんな働きを持たせたいか」を入力すると、AI が機能に適したアミノ酸配列を直接提案し、自然界から候補を探すのではなく“目的に応じた分子を作る”開発を可能にする。医薬、産業酵素、農業など多分野での利用を想定している。

同社は2025年11月に約1億600万ドルを調達した。出資には Jeff Bezos を含む複数の投資家が参加した。調達資金は研究設備の強化や共同研究の拡大、商用化に向けた体制構築に充てられる見通しである。

自然界依存の探索型たんぱく質開発を、AIによる設計主導型へ転換

現在のたんぱく質開発は、自然界に存在する分子を探索し、試行錯誤で最適化するプロセスが中心である。目的に合う分子がそもそも存在しない場合も多く、実験回数や時間、コストが大きく膨らむ。また、分子機能の設計空間は膨大で、人力では探索しきれず、創薬や酵素開発のスピードが根本的に制約されている。

同社は、この課題に対し、目的機能から逆算して新しいたんぱく質配列を生成するAIモデルを導入することで解決を図っている。自然界の配列に依存せず、必要な性質に合わせた分子を直接設計できるため、探索工程を大幅に短縮できる。さらに、実験データをフィードバックしてモデルを継続的に改善する仕組みにより、より高精度で実用度の高いたんぱく質設計を可能にしている。


機能条件を入力して新規配列を生成するAIモデルと実験ループの融合

同社技術の基盤となるのは、膨大なたんぱく質配列と機能データを学習した生成モデルである。モデルはアミノ酸配列と機能の対応関係を統計的に捉え、目的とする働きに適した構造を推定できる表現を獲得している。これにより、既存の配列を改変するのではなく、機能の要件から新しい分子を直接生成する設計プロセスが実現する。

さらに、自然言語や機能条件を入力として扱えるインターフェースが整備されており、研究者は「安定性を高めたい」「基質特異性を変えたい」などの要求をモデルにそのまま伝えられる。モデルはこれを条件として配列生成に反映し、目的に適合した分子候補を自動提案する。これにより、要求仕様と配列生成が一体化した開発フローが成立している。

加えて、生成された配列は実験で検証され、その結果が再びモデル学習に組み込まれる仕組みが用意されている。これにより、実験データを通じて予測精度が継続的に向上し、特定用途向けの性能最適化も可能になる。生成・実験・改善の循環が確立することで、探索型より高速かつ高精度のたんぱく質設計が持続的に進む体制が整えられている。

開発領域拡大と高速検証体制の構築

同社は今回の調達を機に、生成モデルの適用領域を大きく広げる計画である。これまで医薬中心だった開発対象を、産業酵素、ゲノム編集ツール、材料用途へ段階的に拡張し、各領域で必要な特性を踏まえた専用モデル群の構築を進める。また、量産を見据えた品質評価やスケールアップ工程にも取り組み、研究用途から産業レベルの利用へ移行する体制を整える方針である。

さらに同社は大規模実験を自動化するための内部インフラを強化し、毎週数千〜数万規模の新規配列を検証できる生産ラインの確立を目指す。CEO Ali Madani 氏は「モデルを改良し続けるためのデータ供給力を拡大する」と述べており、生成した分子を継続的に評価できる“高速学習工場”を社内に構築する計画である。この基盤が整えば、用途別プロジェクトの立ち上げが一層加速すると見込まれる。


参考文献:
※1:Jeff Bezos Is Backing An AI Startup Aiming To Make Proteins Programmableリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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