水素生成スタートアップのUtility Globalが1億ドルを調達、京セラも量産体制構築に協力
米Utility Globalは、産業副生ガスを活用して外部電力に依存せず水素を生成する技術「H2Gen®」を開発する脱炭素スタートアップである。鉄鋼・精製・化学など難脱炭素産業を主要ターゲットとし、既存プラントに組み込める実装型ソリューションとして展開を進める。
今回、シリーズDの第1クロージングとして1億ドルを調達。Ara PartnersとAPG Asset Managementが主導し、商用導入の加速、製造・供給体制の拡充、グローバル展開に充当する。
京セラ提携が示す「量産体制」
今回のSeries D(第1クロージング1億ドル)は、Utility Globalが掲げる電力インフラに依存しない産業脱炭素モデルが、資本市場に「実装可能なビジネス」として評価された点が核心だ。再エネ電力を前提とする水電解型グリーン水素が、電力コストや系統制約に左右されるのに対し、同社は既存産業設備を起点に脱炭素を進める“移行期の現実解”を提示している。
なお本件とは別に、同社は2025年12月に京セラとの戦略的提携を発表している。H2Gen®の中核となる電気化学セルを京セラのグローバル製造ネットワークで量産する体制を整備し、コスト低減と供給安定を図るものだ。技術の優位性だけでなく、量産・供給という産業装置ビジネスの要件を先に固めた点は重要である。
資金調達と製造基盤強化が同時に進むことで、Utilityは単なる技術ベンチャーから、量産・導入可能な脱炭素装置メーカーへと軸足を移しつつある。鉄鋼・精製・化学といった難脱炭素領域において、経済合理性を伴う実装プレイヤーとしての存在感が問われる局面に入った。
副生ガスを“燃やさず”水素に変える
Utility Globalの中核は、産業副生ガスやバイオガスに含まれる化学エネルギーを利用し、水を分解して高純度水素を生成する「H2Gen®」技術である。外部電力に依存せず、既存プラント内で水素をオンサイト製造できる点が特徴だ。
同時に高濃度CO₂を分離回収できるため、CCUSとの統合が容易であり、水素供給と排出削減を一体で実現する設計となっている。燃焼ではなく電気化学的変換を用いる点に技術的差別性がある。
システムはモジュール型で、鉄鋼・精製・化学など難脱炭素分野への組み込みを想定する。大規模な電力インフラ増強を伴わず導入可能で、既存資産を活かしながら排出強度を下げる実装型プラットフォームと位置づけられる。
量産・導入実績の積み上げが重要な局面
今後の焦点は、UtilityがH2Gen®を“導入可能な装置として繰り返し展開できるか”にある。CEOの Parker Meeks氏 は今回の調達について、「検証段階を超え、既存資産内で機能する実装可能な脱炭素ソリューションを求める産業顧客の期待に応えるための重要なステップ」と位置づけている。
また、Ara Partnersのパートナーであり、Utility Globalの取締役会議長でもある Cory Steffek氏 は、産業脱炭素の難易度を踏まえたうえで、同社の差別化点を「従来の化石燃料プロセスとコスト・信頼性で真正面から競合できること」と評価している。こうした投資家・経営トップ双方の視点は、経済合理性を伴う実装力こそが成長の鍵であることを示している。
調達資金は製造能力拡張やプロジェクト遂行体制の強化に充てられるが、装置メーカーとしてのスケール獲得は量産体制だけでは達成されない。政策期待が後退する脱炭素市場で、導入実績とリピート受注モデルを確立できるかが、Utilityの次の評価軸となる。
参考文献:
※1:Utility Global Announces $100 Million First Close of Series D Financing to Deploy its Economic Industrial Decarbonization Platform Globally( リンク)
※2:Utility Global は 京セラと経済的に脱炭素化を実現する H2Gen(R) の製造拡大に向けた戦略的提携で合意( リンク)
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