SAFを製造・供給する米LanzaJetが4,700万ドルを調達、三井物産も出資
米LanzaJetは、低炭素エタノールを原料に持続可能な航空燃料(SAF)を製造するAlcohol-to-Jet(ATJ)技術を商用化する企業である。既に米ジョージア州で世界初の商用規模ATJプラント「Freedom Pines Fuels」を稼働させている点が特徴だ。
2026年2月、同社は企業価値6.5億ドルで約4,700万ドルを調達した。総額1億3,500万ドルを想定する成長資金の第1弾である。出資には、Shell、International Airlines Group(IAG)、Groupe ADP、三井物産、LanzaTechなど既存の戦略投資家が参加。エネルギー、航空、空港といったサプライチェーン中核プレイヤーが追加出資に踏み切った点が今回の特徴だ。
政策で加速する航空燃料の脱炭素化
航空の長距離路線は電動化が現実的ではなく、脱炭素の主軸はSAFに置かれている。ICAOは2050年ネットゼロ目標を採択し、EUもReFuelEU AviationでSAF混合を段階的に義務化した。航空燃料の脱炭素は、努力目標ではなく制度として進み始めている。
一方で、SAF供給は航空燃料全体の1%未満にとどまる。政策により航空会社のSAF需要は増えることが見込まれるが、商用生産能力は限られている。需要が先行し供給が不足する構図が、当面の市場環境であると予想される。
同社の今回の資金調達は、環境テーマへの期待ではなく、拡大が見込まれる市場で実際に供給できるポジションへの評価と見るべきと考えられる。
低炭素エタノールを活用するATJ技術
同社は、低炭素エタノールを原料に持続可能な航空燃料(SAF)と再生可能ディーゼルを製造する独自の Alcohol-to-Jet(ATJ) 技術を中核に据える。エタノールを触媒反応で処理し、既存航空機で使用可能なドロップイン燃料へ転換するプロセスで、既存インフラとの高い互換性を持つ点が特徴だ。
原料には廃棄物由来や低炭素エタノールを活用でき、再生可能天然ガスなどと組み合わせることで温室効果ガス排出の削減を図る。エタノールという既存の供給網を活用できるため、原料制約の強い他方式と比べ拡張性を持つ。
同社は米ジョージア州で世界初の商用規模ATJプラント「Freedom Pines Fuels」を稼働させており、実証段階にとどまらない量産体制を確立している。標準化したプロセスを横展開することで、政策拡大が見込まれるSAF市場での供給能力強化を狙う。
戦略的パートナーと共に供給体制を強化
同社は今回の資金調達を、ATJ技術を核としたSAFの商用展開拡大に充てる方針を明示している。既存の商用プラントを基盤に、世界各地でのSAF・再生可能ディーゼル供給体制を一段と強化し、制度的に拡大する需要を取り込む戦略だ。
また、同社CEOのジミー・サマルツィス氏は、投資家ネットワークの拡大が航空業界の脱炭素化とSAF産業全体のスケールアップを支えるとしており、今回のラウンドがその連携をさらに深めるものだとコメントしている。
既存株主である戦略的パートナーとの協働によって、実際の供給能力を高める意欲を示している。 これらは、単なる資金調達にとどまらず、政策で拡大するSAF市場に対する供給ポジションの確立と長期的な事業基盤の強化を意図した動きと考えられる。
参考文献:
※1:LanzaJet Announces $47M in New Capital and First Close of Equity Round at $650M Pre-Money Valuation( リンク)
※2:Long term global aspirational goal (LTAG) for international aviation( リンク)
※3:ReFuelEU aviation( リンク)
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