植物由来タンパク質を開発するベタニファームズ、シリーズAで650万ドルを調達

Bettani Farms(ベッタニ・ファームズ)は、米カリフォルニア州バークレー拠点の植物由来タンパク質開発企業。独自の Caseed™ プラットフォーム により、乳・ナッツ・豆類を使わずチーズの風味や伸びを再現する代替素材を開発する。モッツァレラやブリーなどを中心に食品メーカーや外食企業向けB2B展開を進めている。
2025年10月、同社は Climax Foods から Bettani Farms に改称し、シリーズAラウンドで 650万ドル(約10億円) を調達。リード投資家は S2G Ventures、ほか At One Ventures、Gratitude Railroad、Manta Ray Ventures、Toba Capital などが参加した。資金は製造拡大や供給網強化、次世代タンパク質開発に充てられる。
アレルギーや環境問題に配慮した製品開発
同社は、植物性チーズが抱える「溶けにくい・伸びない・歯につく」といった機能的課題を中心に、味・食感・栄養の再現性不足を問題視している。また、乳・ナッツ・豆類に起因するアレルゲン対応の限界や、畜産由来の高い環境負荷にも注目。単なる代替ではなく、栄養価と持続可能性を両立した“次世代の乳製品体験”を実現することを目指している。
独自の Caseed™ プラットフォーム を核に、乳タンパク質カゼインの構造・機能を植物由来タンパク質で再現。チーズ特有のとろみやコク、伸びを再現しつつ、アレルゲンを排除し高タンパク質を維持する。また、中立的な風味・色調を備え、従来品に比べて炭素排出や水使用量を大幅に低減。
味・栄養・環境の三立を図る新しいアプローチを打ち出している。
分子設計とデータドリブンで進化する代替乳タンパク技術
同社の中核となるのは、独自の Caseed™ プラットフォーム。これは乳タンパク質カゼインの構造と機能を科学的に解析し、同様の特性を示す植物由来タンパク質を分子レベルで再設計する技術である。従来の代替素材では得にくかった“溶ける・伸びる・まとまる”といったチーズ特有の挙動を再現することを目指している。
Caseed™ は、植物タンパク質の配列や結合性をデータドリブンで最適化し、加熱時の相転移や油脂との相互作用を制御する点に特徴がある。これにより、加熱後もムラなく溶け、冷却しても弾力や粘性を保つことが可能となる。味や香りに影響する副反応を抑える設計も行われており、自然な乳製品に近い食感と風味を実現している。
さらに、発酵・濾過・精密分離などの工程を通じ、風味の中立性や色調の安定性を維持。原料選定から加工プロセスまで一貫して設計されており、食品メーカーが求める多様な用途——スライスチーズ、シュレッド、ソースなど——への応用が可能。これにより、機能性と汎用性を兼ね備えた新しいタンパク質素材としての基盤を築いている。
新CEOを迎え研究開発中心から商業化へ
2025年10月、Bettani Farms は創業者の主導による研究開発段階を終え、新たに Sandeep Patel 氏 を CEO に迎えた。Patel 氏は飲料ブランド Califia Farms などで経験を積んだ業界のベテランであり、同社を商業化・拡大フェーズへ導く役割を担う。
就任に際し Patel 氏は、「Bettani の技術は、動物性由来を超える“おいしさと機能性”を実現できる。私の使命は、その価値を市場で証明することだ」とコメント。研究開発主導の組織から、供給・販売・ブランド価値を統合した事業体への転換を進める考えを示した。
さらに同氏は、「持続可能な食品づくりは単なる倫理的選択ではなく、産業としての必然だ」と強調。投資家との連携や米国内生産体制の拡張を通じて、環境性・収益性の両立を目指す方針を明確にした。経営交代は、Bettani が研究開発主体の技術企業から、事業拡張と市場創出を重視する商業化企業へと移行する節目を示している。
参考文献:
※1:Climax Foods Announces Rebrand to Bettani Farms, $6.5 Million in New Funding, and Industry Veteran Sandeep Patel as New CEO( リンク)
※2:同社公式HP(リンク)
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