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ロボットやAIを活用して倉庫業務の効率化を支援するDexoryが1億6,500万ドルの資金調達を発表

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Dexoryは、ロボットとAIを活用して倉庫内の状況をリアルタイムで把握し、業務効率を最適化する英国オックスフォードシャー拠点の企業。AI搭載プラットフォーム「DexoryView」を通じ、物流・製造・小売・医薬・eコマース領域で、現場データを取得・解析し「記録から行動へ」の変革を支援している。欧州・北米・アジア太平洋区域でグローバル展開を進め、顧客の運用効率・可視化・スケーラビリティ向上を実現している。

2025年10月、同社は約1億6,500万ドルの資金調達を発表。シリーズ Cラウンドでは、Eurazeo(Growthチーム)が1億ドルをリードし、LTS Growth や Endeavor Catalyst、既存投資家らが参加。また成長債務枠の拡張も行われた。調達資金は製品ロードマップの加速・商業チーム強化・国際市場展開に充てられ、欧米・APAC地域での本格的な運用支援を推進する。


AI×自律ロボティクスで倉庫を最適化

現代の物流・製造・小売・医薬業界では、在庫精度の低下や人手による棚卸負担、データの非連携などが深刻な課題となっている。平均在庫精度はわずか91%に留まり、1件の誤記録が欠品・誤出荷・SLA違反・労務ロスなど多大な損失を招く。従来型の手動監査や定期棚卸ではリアルタイム性が確保できず、運用全体の最適化を阻む構造的ボトルネックとなっている。

同社は、自律走行ロボットとAI解析を融合した「DexoryView」により、倉庫全域を自動スキャンし、リアルタイムなデジタルツインを生成。日次レベルで在庫・空間・作業データを収集し、誤差や欠損を自動補正する。AI駆動の最適化モジュール「Optimise」や「Integrity」を通じ、在庫精度99.9%、監査時間90%削減を実現。人的負担を軽減し、サプライチェーン全体の透明性と意思決定速度を飛躍的に高めている。


倉庫空間をデータ化するリアルタイムセンシングの革新

同社は自律走行ロボットと高性能センサーを組み合わせ、倉庫内の数万ロケーションを自動スキャンしてリアルタイムのデジタルツインを生成する。高さ14メートル超の棚まで精密に計測し、在庫位置や数量、状態を常時可視化。誤配置や欠品を即時に検知し、人的監査を不要化することで、倉庫運営の透明性と信頼性を高めている。

取得データはクラウド上のDexoryViewで統合・解析され、AIが在庫精度を99.9%に維持しつつ、ボトルネックや滞留箇所を自動特定する。需要予測や空間最適化も実行でき、運用効率の向上とコスト削減を同時に実現。サプライチェーン全体の意思決定をリアルタイムデータに基づいて最適化する仕組みを提供している。

導入はサブスクリプション型で、大規模改修を伴わず約2週間で稼働可能。平均219%のROIを示し、6か月以内に投資回収を果たす事例も多い。3PL、小売、製造、医薬、航空貨物など多様な分野で展開され、既存システムとの連携を通じて現場の柔軟性と拡張性を高めている。


製品開発とグローバル展開を加速

今回の資金調達により、Dexoryは製品ロードマップの加速を最優先課題としている。CEOのアンドレイ・ダネスク氏は「顧客が求める変革をいち早く実現する」と述べ、ロボット、ソフトウェア、実運用データを統合した新たなエージェントシステムの開発を進めている。これにより、倉庫運営を単なる監視から行動へと導く、自律的で持続可能なインテリジェンス基盤の構築を目指している。

今後は、グローバル展開の拡大と商業チームの強化に注力する方針である。欧州・北米・アジア太平洋地域での実績を基盤に、実証段階に留まりがちな導入から本格的な運用フェーズへの移行を推進する。既存の物流・製造業に根付くレガシー構造を打破し、スケーラブルで分散型のインテリジェンス運用を実現することで、世界のサプライチェーン最適化を加速させる考えである。


参考文献:
※1:Strong customer demand enables Dexory to secure $165M in funding, accelerating global expansion and AI-powered capabilities(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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