新型電池材料を開発する米Group14 TechnologiesがシリーズDで684億円を資金調達。SKとの合弁事業を完全所有も発表

電池材料を開発する米Group14 Technologiesは2025年8月20日、シリーズD資金調達ラウンドでの$463m(約684億円)の確保を発表した。
同社は2015年、Rick Luebbe CEOとRick Costantino CTOにより設立。2人とも、BASFが最終的に買収したバッテリー開発企業のEnerG2で、経営陣だった。ワシントン州に本社を置く。
注目されてきたシリコンのバッテリーへの利用をどう実現したのか?
現状、電気自動車(EV)や多くの電気製品に使われているリチウムイオン電池の負極には、グラファイトが使われている。負極がグラファイトであることで、コスト面や寿命の面でメリットがある半面、さらなる急速充電が難しいなどの課題がある。
それを乗り越える素材として注目されてきたのが、エネルギー密度の高いシリコンだ。しかし、充放電で膨張と収縮を繰り返すため、脆くなってしまうデメリットが存在する。
Group14が開発した電池材料「SCC55」は、シリコンを使ったもの。素材特有のデメリットを打ち消すため、材料の中のところどころに空間(孔)を設けている。この部分が膨張をする際の余地となる。
SCC55をバッテリーに使うことによって、エネルギー密度が従来の最大50パーセント、向上。さらに、EVのバッテリーを残量80パーセントまで充電するのに、10分もかからないとGroup14は説明する。
すでに、SCC55は市場投入しており、その一例として2024年に中国製スマートフォンの「HONOR Magic7 Pro」のバッテリーに使われていることを同社は明らかにしている。
資金調達の目的は引き続きの米国と韓国での生産拡大
シリーズDは、韓国のコングロマリットであるSKが主導。他、Porsche InvestmentsやMicrosoft Climate Innovation Fundなどが参加した。
なお、Group14とSKはこれまでも韓国の尚州市にバッテリー活性材料(BAM)の工場を合弁で運営してきた。BAM-3と呼ばれるこの韓国内の工場は今後、Group14が完全に所有することも、資金調達とともに発表があった。
Group14の完全所有となる韓国の工場「BAM-3」(同社プレスリリースより)
調達を報じたTechCrunch(TC)によると、これまではBAM-3の75パーセントがSKの持ち分だったという。シリーズDで、SKからは現金だけでなく株式の受け渡しなども含まれていると考え得るが、TCの取材にGroup14の広報担当者は詳細のコメントを避けた。
資金の使途は、「米国および韓国における生産拡大を継続」としている。BAM-3は韓国に所在するが、BAM-1・2はGroup14の本社と同じ米ワシントン州にある。
Group14のLuebbe CEOは、次のようにコメントした。
「これはGroup14にとって契機となるもので、当社のシリコン電池材料を活用した高性能エネルギー貯蔵の未来が、すでに到来していることを示す明確なシグナルだ。私たちは地域の電池サプライチェーンを強化し、世界的な貿易の不確実性からお客様を守る」
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