MIT発スタートアップのFoundation Alloyが2,200万ドル調達 “溶かさない”金属製造で先端材料供給を変革
米Foundation Alloyは、金属を溶かさずに高性能合金を製造する固相冶金プラットフォームを手がけるスタートアップだ。同社はシリーズAラウンドで2,200万ドルを調達した。ラウンドはVoyager Venturesが主導し、Yamaha Motor Ventures、America’s Frontier Fund、Material Impactなどが参加した。
今回の資金は、同社の固相冶金プラットフォーム「MetalsFIRST」を産業規模に拡大するために使われる。MetalsFIRSTは、元素粉末の配合設計から機械的合金化、成形、焼結までを統合し、金属を溶かさずに高性能合金を製造するプロセスだ。同社は今夏、マサチューセッツ州に3万6,000平方フィートの新施設を開設する。また、兼松が追加投資を行い、日本・東南アジア向けの商業流通パートナーにもなった。
「新素材」ではなく、金属の作り方を変える会社
今回のポイントは、同社を単なる「新素材を作る会社」ではなく、金属の作り方そのものを変える会社として見る点にある。航空宇宙、防衛、エネルギー、先端製造では、より高温・高負荷の環境に耐える材料が求められる一方、新しい金属材料を量産に乗せるには長い時間と大きなコストがかかってきた。
従来の金属製造は、材料を一度溶かして鋳造・加工する溶融プロセスが中心だった。これに対し、同社は金属を溶かさず、粉末の状態で組成や微細構造を設計し、成形・焼結によって部品化する。溶融・凝固に伴う制約を避けることで、従来プロセスでは難しかった高強度・耐熱性・耐摩耗性を備えた合金の製造を狙う。
この技術が重要なのは、材料性能だけでなく供給制約にも効く可能性があるからだ。防衛、航空宇宙、エネルギー、先端製造では、材料供給の遅れが製品開発や設備稼働のボトルネックになりうる。同社は固相プロセスを通じて、高性能合金をより速く、柔軟に供給することを目指している。
MetalsFIRSTで「溶かす」から「粉末を設計して固める」へ
技術の中核となるMetalsFIRSTは、組成設計、機械的合金化、成形、焼結を一体化した固相冶金プラットフォームだ。まず用途に応じて元素と配合比を設計し、元素粉末を高エネルギーボールミルで処理する。熱で溶かすのではなく、機械的な力によって粉末を合金化する点が特徴である。
その後、粉末を最終形状に近い部品へ成形し、比較的低温の焼結プロセスで高密度化する。溶融プロセスに依存しないため、従来は扱いにくかった組成や微細構造を設計しやすく、用途ごとに性能を最適化しやすい。つまり、材料を「選ぶ」のではなく、求める性能から逆算して「作る」アプローチに近い。
同社は、モリブデン系合金「Molyclast」シリーズも展開している。高温環境での硬度保持や耐摩耗性を特徴としており、熱間鍛造用金型やダイカスト用金型などでの活用が見込まれる。高温で軟化しやすい従来工具鋼の課題に対し、より長寿命で安定した金属部材を提供する狙いだ。
日本・東南アジアへ広がる次世代金属材料の供給網
同社のJake Guglin CEOは、今回のシリーズAについて「研究室ではなく工場に資金を投じるもの」と位置付けている。新施設とモジュール型生産セルにより、同社はパイロット段階から量産段階へ移行し、2027年までに週あたりトン単位の生産能力を目指す。
日本市場との接点も大きい。兼松は今回、シリーズAラウンドで同社株式を取得したうえで、次世代金属材料・部品を国内外に提供していく方針を示した。特に、金型、切削工具、産業部品に加え、中長期的には航空機用部品や次世代エネルギー用途など、より過酷な環境下で使われる先端分野への展開も視野に入れる。
兼松は、特殊鋼貿易で培った金属分野の知見と国内外ネットワークを活かし、従来のトレーディング機能を進化させた「金属分野のソリューション提供型ビジネス」を展開するとしている。今後の焦点は、同社の固相プロセスが量産供給へ広がり、材料性能だけでなく、生産性、設備稼働率、サプライチェーン信頼性の改善につながるかにある。
参考文献:
※1:Foundation Alloy Industrializes New Metals Platform with $22M Series A, New US Facility, and Japanese Distribution Partnership( リンク)
※2:同社HP( リンク)
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