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ソフトウエアで量子計算のエラー訂正を行うQedma、シリーズAで37億円を調達。提携するIBMも投資

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量子コンピューターのエラー訂正ソフトウエアを開発するイスラエルのQedmaは2025年7月3日、シリーズA資金調達ラウンドでの$26m(約37億円)の確保を発表した。

同社は、イスラエル国防軍の研究開発プログラム「Talpiot」に参加経験のあるAsif Sinay CEO、ヘブライ大学でコンピューターサイエンス分野の教授を務めるDorit Aharonov最高科学責任者(CSO)、イスラエル工科大学テクニオン校の理論物理学教授であるNetanel Lindner CTOによって、2020年に設立。テルアビブに本社を置く。

ソフトウエアで量子コンピューターのエラーを低減

科学技術の進展への貢献が期待される量子コンピューターだが、「エラー」という大きな課題がある。イオンや超伝導体などによる量子ビットは、安定した状態を保ち続けるのが難しく、計算でエラーが生じてしまう。

各国に存在する量子コンピューターを開発するスタートアップの多くは、このエラーを軽減する、訂正するため、ハードウエア面での性能向上を目指す。一方、Qedmaのアプローチは、エラーの原因となるノイズを分析し、アルゴリズムによってエラー訂正を行っていくものだ。よって、ハードウエアでなくソフトウエアを開発する。

具体的には、ハードウエアのノイズ特性を学習、分析し、量子コンピューターでの計算に調整を加えて特定の種類のエラー発生を低減。後処理で、残りのエラーが最終的な計算に与える影響への対処を行う。

量子コンピューターの世界には、「Quantum advantage」(量子優位性)という言葉がある。古典コンピューターより量子コンピューターの方が有用であるとの意味を持つ言葉だ。Sinay CEOは資金調達を報じるTechCrunchの取材に、「今年中にも、量子コンピュータの優位性が現実のものであると自信を持って実証できる可能性がある」と、めどを示した。

なお、シリーズA資金調達ラウンドには、IBMが新規投資家として参加した。一方で、QedmaとIBMは2024年からパートナーシップを結んでいる。IBMは、量子コンピューターのハードウエアもソフトウエアも開発しており、Qedmaの技術を取り込んでいきたいとの思惑が垣間見える。

QedmaのLindner CTOは2025年5月に開催された「Q2B TOKYO 2025」で理化学研究所の柚木清司氏とともに講演した

CEOはインフラへの巨額投資とは異なるアプローチを強調

シリーズAはイスラエルのベンチャーキャピタル(VC)が主導。前述の通り、IBMも参加している。資金の使途は公表しなかった。

Sinay CEOは、次のようにコメントした。

「Qedmaのソリューションは、前例のない効率で偏りのないエラー削減を実現し、これまで実行不可能だった量子アルゴリズムを可能にするという点で、他に類を見ない。

業界が量子コンピューティングインフラに巨額の投資を行い、量子ビット数を拡大する中、当社のプラットフォームに依存しないアプローチにより、あらゆる量子コンピューティングアーキテクチャにおいて既存のハードウェアから最大限の価値を引き出せる。

量子コンピューティングの実用化までの期間を短縮することで、量子システムの規模拡大に伴い、さらに重要となる基礎を確立していく」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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