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GNSS補正技術開発の米Swift NavigationがシリーズEで74億円を調達。自動運転などでのさらなる利用へ

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全地球航法衛星システム(GNSS)の信号を補正し高精度な測位を行う技術を開発する米Swift Navigationは2025年7月23日、シリーズE資金調達ラウンドでの$50m(約74億円)の確保を発表した。

同社は2023年設立。創業者らは元々、凧のように空へ飛ばす空中風力タービンを開発していた。このタービンを高精度に誘導するためには、高精度なGPSシステムが必要となったため、GNSSの技術開発を行うようになったという経緯を持つ。

本社はサンフランシスコに置く。

さらなる高精度な測位を実現した「大気モデリング」

カーナビゲーションシステムやスマートフォンの地図アプリで多くの人が利用する、GPS。一見、非常に正確な位置を示しているように感じるが、人工衛星からの信号を受け取るだけでは3〜10メートル程度の誤差が生じている。

これを補正する方法の一つとして、リアルタイムキネマティック(RTK)が採用されてきた。RTKは、衛星からの信号とともにモバイル通信の基地局などの情報から、自身(あるいは測位したい移動局)の位置を割り出す。できるだけ正確な位置情報が必要なGNSSのユーザー、デバイスは、このようにRTKを利用して測位を行っている。

なお、スマートフォンの位置情報も、RTKほど精密ではないものの基地局との距離を測り精度を上げている場合がある。

Swift Navigationも、RTKを利用してきた。それに加えて、大気モデリング(Atmospheric Modeling)という手法も使うことで、精度を向上させている。

繰り返しになるが、GNSSは衛星から信号を受け取っただけでは数メートルの誤差が生じる。その原因は、大気圏内の電離層や対流圏の大気の状況が常に変化しているためだ。Swift Navigationによると、大気の変化が与える影響はRTKを用いたとしてもかえって誤差が大きくなってしまうほどだという。

そこでSwift Navigationは、大気の状態や変化をモデル化。RTKと併用しつつ、これまで以上に高精度なGNSSでの測位につなげる。

Swift Navigationの主力プロダクトはSkylarkというクラウドの測位サービスだが、これも大気モデリングを利用し、高い精度の位置情報を提供する。Skylarkは自動車やロボットの自動運転からスマートフォンやウエアラブル端末など個人が持つようなデバイスまで、さまざまな用途を想定している。

なお、Swift Navigationのオフィシャルサイト全体を見ると、自動運転での利用に重点を置いているように感じられる。しかし、実際にはそれだけでなく建設現場の位置決めや鉄道運行での利用など、さまざまな分野のソリューションになることを目指す。

2025年4月には、Skylarkの測位が西欧地域で最大2センチメートル以内の誤差に収めていると発表があった。

Swift Navigationの企業紹介動画

カナダ国営企業のCVCも参加

シリーズEは、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。他、カナダの国営通信企業であるTELUSのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、TELUS Global Venturesなどが参加した。

資金の使途は「ADAS(先進運転支援システム)、自律走行、ロボティクス、精密物流といった分野におけるさらなる普及を推進」としており、これらの分野での販売拡大を目指すと受け止められる。

Swift NavigationのTimothy Harris共同創業者兼CEOは、次のようにコメントした。

「精密測位の変革力を理解してくださる、強力な投資家グループからのご支援をいただき、大変嬉しく思う。今回の資金調達により、私たちは成長を加速し、パートナーシップを拡大し、革新を続け、現代において最も重要な技術のいくつかを解き放つ」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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