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Odyssey、世界モデル開発に3.1億ドル調達

Odysseyは、AIが現実世界の物理、因果関係、ダイナミクス、人間行動を理解し、リアルタイムにシミュレートする「世界モデル」の開発を進めるAIスタートアップだ。2023年にOliver Cameron氏とJeff Hawke氏が設立し、ロボティクス、科学、医療、教育、ゲーム、防衛などへの応用を見据えている。

同社は2026年6月、シリーズBラウンドで3億1,000万ドルを調達したと発表した。評価額は14億5,000万ドル。Natural Capitalが主導し、Amazon、GV、AMD Ventures、EQT、IQTなどが参加した。あわせてAWSを優先クラウドとし、Amazon傘下のAnnapurna LabsとTrainium向け最適化にも取り組む。

「動画を作るAI」ではなく「操作できる世界」を作るAIへ

今回の焦点は、単なる動画生成AIの延長ではなく、操作可能な世界を生成する基盤モデルに大型資金が集まった点だ。一般的な動画生成モデルは、事前に与えられたプロンプトをもとに映像を作る。一方、世界モデルは過去の状態とユーザーの行動から次の状態を予測し、入力に応じて世界をリアルタイムに変化させる。

この違いは、応用範囲を大きく広げる。映像品質の向上だけであれば、主な用途は制作支援にとどまる。しかし、物体の移動、衝突、音、複数主体の行動を一貫して扱えるようになれば、AIエージェントの訓練環境やロボットのシミュレータとして利用できる可能性がある。

つまりOdysseyが狙うのは、「動画を作るAI」ではなく、「AIが試行錯誤するための世界」を作る技術だ。Amazon、AMD Ventures、IQTなどの参加は、世界モデルがクリエイティブ領域にとどまらず、クラウド、AI半導体、防衛、ロボティクスにまたがるインフラ競争になりつつあることを示している。

リアルタイムに反応する生成型シミュレーション基盤

中核となるのが、同社最大規模の汎用世界モデル「Odyssey-2 Max」だ。同モデルは、状態を逐次予測する自己回帰型の設計を採り、リアルタイムに動作しながら物理的整合性の高いシミュレーションを目指す。Odysseyによれば、VBench 2の物理スコアは58.52、PAI-Benchの物理スコアは93.02で、モデル規模と計算量の拡大により物理ダイナミクスの一貫性が向上したという。

また「Starchild-1」は、映像だけでなく音声も同時に生成するリアルタイム・マルチモーダル世界モデルだ。ユーザーからのテキスト、音声、行動入力を継続的に受け取り、視覚と音を同期させながら次の状態を生成する。これにより、会話、環境音、動きが固定された映像ではなく、相互作用に応じて変化する世界として扱える。

さらに「Agora-1」は、複数の人間やAIが同じ生成世界を共有して相互作用できるマルチエージェント世界モデルである。最大4人が同一の生成空間内でプレイでき、共有ワールドステートを維持しながら各プレイヤーに映像を配信する。加えて、強化学習フレームワーク「PROWL」では、AIエージェントが世界モデルの失敗例を探索し、そのデータを使ってモデルを改善する閉ループ型の学習を目指している。

AWS・Trainiumとの連携で世界モデルの商用化を加速

創業者のOliver Cameron氏は、今回の資金調達について「世界を真に理解し、シミュレートできるAI」の開発を大きく加速するものだと説明している。同氏はまた、世界モデルが有望な研究テーマからブレークスルーとなる基盤技術へ移る「GPT-3 moment」に近づいているとも表現し、同領域の転換点を強調した。

AmazonのVice President and Distinguished EngineerであるRon Diamant氏は、世界モデルを「巨大な計算スループット」と「厳しい低遅延制約」を同時に求める、AIの中でも特に負荷の高いワークロードと位置づけた。そのうえで、Trainiumはこの種のスケールに適したチップであり、AWSを通じてOdysseyのモデル最適化と市場展開を支援すると述べている。

投資家側の期待も大きい。Natural CapitalのJay Zaveri氏は、今回の出資を同社にとって過去最大の投資とし、Odysseyが「言語モデルを超えたAI」を定義する可能性に期待を示した。GVのLuna Schmid氏も、世界モデルはすでに数十億ドル規模のカテゴリーになっており、Odysseyはその初期から主導してきた企業だと評価している。


参考文献:

※1:Our $310 Million Fundraise to Accelerate World Simulation( リンク

※2:The AI startups building beyond chatbots are choosing Amazon’s custom chips. Here's why.( リンク

※3:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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