AI推論向け専用半導体を開発するOLIXが3.12億ドル調達 Armも出資
英国ロンドンのOLIXは、大規模AIモデルの推論処理に特化した半導体とラック型システムを開発する2024年設立の企業である。モデルを動かす工程を複数の専用チップへ分け、チップ間を光通信で結ぶことで、生成AIの応答速度と電力効率の向上を目指す。
同社は2026年8月3日、シリーズBで3億1,200万ドルを調達し、評価額は33億ドルとなった。Fundomo、SoftBank Group傘下のArm、Hudson River Tradingなどが参加した。資金は半導体開発、製造準備、顧客向けシステムの構築に充てる。
推論工程ごとに専用チップを割り当てる分散設計
生成AIが文章を出力する推論処理は、入力文の読み込み、注意機構、混合専門家モデル、単語を一つずつ生成する処理など、性質の異なる工程で構成される。現在は多くの工程を同じ種類のGPUで動かすが、必要な演算量やメモリ帯域は工程ごとに異なる。OLIXは各工程へ専用チップを割り当て、工場の生産ラインのようにつなぐ構成を掲げる。
第一弾は、次の単語を逐次生成する「デコード」処理向けの半導体である。デコードでは同じモデルの重みを繰り返し読み出すため、演算器の数だけでなく、メモリからデータを取り出す速度が応答性能を左右する。同社は単体チップの汎用性を高めるのではなく、処理を分割して多数のチップを同期させることで、推論全体の効率を高めようとしている。
当社メディアでも以前、一枚の大型チップで通信量を抑えるCerebras Systemsを取り上げた。Cerebrasがウェハー級の半導体へ演算資源を集約するのに対し、OLIXは処理を専用チップへ分散し、光接続で一つのシステムとして動かす。AI推論のデータ移動を減らすという目的に、反対方向の設計で取り組む点が特徴である。
SRAMと光接続で組む分散型の推論アーキテクチャ
一般的なAIアクセラレーターは、チップ外部の積層メモリであるHBMから大量のデータを読み込む。OLIXは、容量は小さいが高速かつ低遅延なSRAMを演算チップ上に置く。モデル全体を一枚へ収めるのではなく、処理の一部を多数のチップへ分担させることで、各チップが必要とするデータをSRAM内に保持する設計である。
分散したチップの間では、電気信号ではなく光を使って中間データを受け渡す。光接続は配線距離が延びても帯域と消費電力を確保しやすく、複数ラックにまたがる構成へ拡張できる。光が担うのは演算そのものではなくチップ間通信であり、電子回路による計算と光インターコネクトを組み合わせる方式である。
多数の専用チップを効率よく動かすには、前段の処理終了を待って後段が止まらないよう、実行順序をそろえる必要がある。同社は各命令の所要時間を把握するコンパイラーで処理を割り当て、中間データの滞留を減らす。SRAMと光接続による性能値は同社の設計・シミュレーションに基づき、実機での独立検証は今後となる。
ソフトバンク傘下Armの出資と2027年の製品出荷計画
同社は調達資金で、自動運転車群の保有と運用拠点を拡大し、新たな都市へ進出する。Waymoとの運用はフェニックスとマイアミで始まり、ロンドンも予定される。一方、日本での自動運転事業や、Woven Capitalとの具体的な協業内容は発表されていない。
共同創業者兼共同CEOのLadi Delano氏は、自動運転には車両、充電、整備、データシステム、24時間運用が必要であり、インフラの保有と運営が競争力を左右すると説明した。Woven CapitalのBetty Lee氏も、自動運転の次の波はソフトウェアと同じくインフラの課題であると評価している。
参考文献:
※1:OLIX raises $312m at a $3.3bn valuation and appoints Professor Nick McKeown to its board( リンク)
※2:同社HP( リンク)
【世界の半導体技術の動向調査やコンサルティングに興味がある方】
世界の半導体業界の動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。
先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら