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グリーンスチールスタートアップの米ElectrasteelがシリーズBで265億円を調達。実証プラント建設へ

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米国のグリーンスチール関連スタートアップであるElectrasteel(以下、Electra)は2025年4月24日、シリーズB資金調達ラウンドでの$186m(約265億円)の確保を発表した。

Electraは、投資家のSandeep Nijhawan CEOと、過去に複数のサステナブル関連スタートアップを立ち上げた化学者のQuoc Pham CTOにより2020年、コロラド州ボルダーで設立。ATXが5月7日に資金調達を報じた、Electra Aeroとは異なる企業である。

鉄鉱石を「溶解」しカーボンフリーの鉄を生産

鉄鉱石から鉄を取り出す際、従来の高炉法ではコークスと鉄鉱石とを反応させる。この際、多量の二酸化炭素(CO2)を排出し、鉄鋼業界はカーボンを出さなくても鉄が生産できる技術を模索している。

ATXでも、これまでBig River SteelやStegra(旧称 H2 Green Steel)といった、グリーンスチールの生産方法を開発するスタートアップを取り上げてきた。前者は、CO2排出の少ない電炉の特徴を生かしたもの、後者はグリーン水素により鉄鉱石からの鉄の還元を行うものだ。

参考記事:日本製鉄による買収で注目集めるU.S. Steel。生産されるグリーンスチールとスタートアップ・Big River Steelとは?

参考記事:グリーンスチールを2025年に生産開始。スウェーデンのスタートアップ「H2 Green Steel」

そして今回のテーマとなるElectraは、電炉を利用するものの基本的にはこれらとはまた異なるアプローチを採る。

Electraの製鉄では、まず鉄鉱石を酸性溶液で溶解。すると、不純物が除去され鉄は溶液内にとどまる。その溶液に電気を流し、Electraの言葉をそのまま使えば「鉄分を金属板に電気めっき」する。要は、鉄分だけを取り出し、それを既存の金属板に打ち付けるようなものなのだろう。こうして抽出した鉄を、電炉で鋼にしたり鉄ベースのバッテリーをつくったりする。

電気は再生可能エネルギーを利用することで、プロセスにおいてCO2を発生させない。また、溶解のプロセスは鉄鉱石の品質が悪くても鉄を抽出することにつながり、これまで使えなかった原料からも製鉄が可能だという。

Electraの製鉄プロセスのイメージ写真(同社プレスリリースより)

2024年12月には、ドイツの鉄鋼商社であるInterfer Edelstahl Groupと生産で協力する旨の覚書を交わしている。

鉄鋼サプライチェーンの川上から川下までの企業が投資

シリーズAはベンチャーキャピタル(VC)などが主導し、鉱業関連ではBHP Ventures(BHPのコーポレートベンチャーキャピタル)・Rio Tinto・Roy Hill、鉄鋼関連ではNucor・大和工業、商社では前出のInterfer Edelstahl Groupと豊田通商が応じた。

資金は、実証プラントの建設に利用する。

CEOのNijhawan氏は、次のようにコメントした。

「Electraの技術で、鉄鋼業界のCO2排出量を大幅に削減できる。製鉄を根本から改革するという私たちのビジョンを共有する、多様な投資家の皆様からのご支援をいただき、大変嬉しく思う。当社のクリーンな鉄鋼への需要は高まっており、今回の資金調達により、商業規模生産への道筋が開ける」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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