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スイスのDAC企業、Climeworksが232億円を資金調達。CO2の分離貯留で先行

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スイスで直接空気回収(DAC)技術を開発するClimeworksは2025年7月2日、$162m(約232億円)の資金調達を発表した。

Climeworksは2009年、Christoph Gebald氏とJan Wurzbacher氏によって共同創業。2人は現在もClimeworks の共同CEOを務めており、またともにチューリッヒ工科大学(ETHチューリッヒ)で博士号を取得している。

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すでに3万トン超を処理するプラントが稼働中

DACに取り組む企業の中でも、Climeworksは前述の通り2009年設立であり、先行しているといえよう。同社のウェブサイトによると、Gebald氏とWurzbacher氏はETHチューリッヒ入学初日から意気投合。ウィンタースポーツのためアルプスに赴いた際、氷河の後退に衝撃を受け、気候変動対策に身を投じることになったという。

そして、学内の研究室で二酸化炭素(CO2)回収技術のブラッシュアップを進め、設立に至ったという経緯だ。

ClimeworksのDACは、まず空気を回収し、その後、CO2を分離。そしてCO2を地下に貯留するという、非常にオーソドックスな手法を採る。

2014年に小型のDACプラント稼働を発表し、その3年後の2017年には世界初の商用DACプラントを稼働。こちらは2014年に発表した機器を複数台、並べたような形となっている。2024年には、年間3万6000トンのCO2を回収するMammothが、アイスランドで稼働した。

Mammothの前に立つWurzbacher氏(左)とGebald氏(Climeworksメディアライブラリーより)

Climeworksは今後、2030年頃にメガトン(100万トンの処理能力)クラス、2040年頃にマルチメガトン(数百万トン)クラス、2050年頃にギガトン(10億トン)クラスのプラント稼働を目指している。

さまざまな著名企業ともDACに関する協業を行っており、2025年6月にはドイツのIT大手、SAPとのパートナーシップ締結を発表。SAP向けにカーボンクレジットを発行する。

なお、ClimeworksのウェブサイトのトップページにはSAPの他にも、Microsoft、Boston Consulting Group、JP Morgan Chaseなどといった企業のロゴを掲載し、ともにDACを進めていることをアピールしている。

「炭素除去は定着していく」と共同CEO

2025年7月の資金調達は、投資会社2社が主導し、既存投資家も参加した。資金は技術開発に利用する。

Gebald共同CEOは、次のようにコメントした。

「直接空気回収は実験段階から不可欠なものへと進化した。私たちはコスト削減とイノベーションの推進を通じて、この技術の拡大に注力している。

当社のハイブリッドモデルは、長期的な需要を喚起するとともに、キャッシュフローを生み出し、投資家が今や不可避と見なす市場の成長に貢献している。

$1bの資本金を突破したことは、単なる節目ではない。炭素除去が現実的で、必要なものであり、今後も定着していくことを示している」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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