シリコン負極材を量産するSila、3億ドル調達 米国工場を最大250GWhへ拡張
米国カリフォルニア州アラメダを拠点とするSilaは、リチウムイオン電池向けのシリコン・炭素複合負極材を開発・製造する企業である。2011年に設立され、主力製品の「Titan Silicon」は、従来の黒鉛負極をシリコン系材料で置き換えることで、電池のエネルギー密度や充電性能を高めることを目指している。
同社は2026年7月21日、3億ドルを調達したと発表した。Atreides ManagementとSutter Hill Venturesが主導し、8VC、Bessemer Venture Partners、Matrix Partners、T. Rowe Priceの助言を受けるファンドなどが参加した。資金はTitan Siliconの米国内生産と、ワシントン州モーゼスレイク工場の第2期拡張に充てる。
研究開発を越えたシリコン負極材の商用化
当社メディアでは2024年9月、海外CVCの投資動向を紹介する特集の中で、Siemens系VCのNext47が出資する企業としてSilaを取り上げた。当時は、黒鉛をナノ複合シリコンへ置き換える技術や、材料製造時の二酸化炭素排出量を削減できる点に注目していた。
今回の発表は、こうした材料技術が研究開発や小規模供給の段階を越え、大規模市場へ向けた生産フェーズに入ったことを示している。同社は2021年からTitan Siliconを搭載した製品を出荷しており、現在では数百万台の機器で使用されているという。
モーゼスレイク工場は約160エーカーの敷地に建設され、2025年秋に操業を開始した。第1期の生産能力は年間2GWhで、今後5年間に最大250GWhまで拡張する計画である。材料性能だけでなく、車載電池向けの品質と供給量を両立できるかが、シリコン負極材の普及を左右する。
黒鉛を置き換える低膨張の複合構造
リチウムイオン電池の負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを蓄える。現在広く使われる黒鉛は安定性や製造実績に優れる一方、蓄えられるリチウム量には限界がある。シリコンは重量当たりで黒鉛の最大約10倍の容量を持つが、充電時に体積が約3倍に膨張し、粒子の破損や容量低下を招きやすい。
Titan Siliconの中核は、シリコンと炭素を組み合わせた複合粒子の構造にある。シリコンの膨張と収縮を粒子内部で受け止め、電解液と接する外側の表面を安定させることで、充放電に伴う劣化を抑える。同社は複合材料そのものに加え、電池セルへ組み込むための技術も特許化している。
同社によれば、Titan Siliconで黒鉛を置き換えることで、高性能な既存セルと比べてエネルギー密度を約20%高められる。2,000回を超える充放電サイクルや10分未満の急速充電にも対応し、膨張量は黒鉛に近い水準に抑えられるとしている。パウチ形、円筒形、角形など複数のセル形式に対応し、既存の電池組立工程へ導入できる点も特徴である。
米国内の負極材供給網を構築
今回の発表では、中国が世界の負極材加工の90%以上、電池セル生産の80%以上を占めているとの認識が示された。モーゼスレイク工場の拡張には、電池性能の向上に加え、海外に依存する負極材の供給網を米国内に構築する狙いがある。
共同創業者兼CEOのGene Berdichevsky氏は、今回の資金により米国内の製造能力を拡大し、重要産業へ先端電池材料を安定的に供給する基盤を強化すると説明した。Sutter Hill VenturesのVic Miller氏も、同社が材料科学の発明企業からギガスケールの製造企業へ移行している点を評価している。
今後は、生産規模を引き上げながら、自動車向けに求められる品質、歩留まり、供給の安定性を維持できるかが焦点となる。当社メディアが以前取り上げたCVCの投資先が、米国を代表する次世代電池材料メーカーへ成長できるか、その実行力が問われる段階に入った。
参考文献:
※1:Sila Secures $300 Million in Private Funding to Ramp Gigascale Anode Manufacturing and Strengthen America's Technology Sovereignty( リンク)
※2:弊社記事「海外のCVCはどのようなディープテックに投資しているのか|エレクトロニクス分野のCVC編」( リンク)
※3:同社HP( リンク)
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