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AIで光の取り込み方を変える次世代センサを開発するElio、2,100万ドル調達

米カリフォルニア州サンマテオに本社を置くElioは、AIが目的に応じて取得する情報をリアルタイムに変えられる光学センサを開発している。従来のカメラが固定されたレンズで画像を取得し、撮影後にソフトウェアで解析するのに対し、同社は光学系自体を動的に制御することで、必要な情報を光の段階から抽出する。

同社は2026年7月23日、2,100万ドルの資金調達を発表した。Innovation EndeavorsとXoraが共同で主導し、Kevin Weil氏とScribble VCが参加した。既存投資家のUpWestとResolute Venturesも引き続き出資している。今回の資金を通じ、センシングプラットフォームの商用化と技術開発を進める方針である。

AIが用途に応じて撮影方法を変える光学センサ

一般的なカメラや光学センサでは、レンズの構成や視野、解像度、取得する波長などが設計時に決められている。センサは同じ形式の画像を継続的に取得し、その後段でAIが大量の画素データから必要な情報を探し出す。このため、AIにとって不要な情報も含めて撮影、転送、処理しなければならない。

Elioが目指すのは、AIが「何を知りたいか」に応じて、センサ側の光学条件を変える仕組みである。特定の領域へ細部を集中させる、異なる角度から対象を見る、暗所で必要な信号を強調するといった処理を、撮影後ではなく光が撮像素子へ届く前に行う。これにより、データ量を増やすだけではなく、目的に適した情報を選択的に取得できるとしている。

もう一つの特徴は、同じセンサモジュールへソフトウェアを通じて新しい計測能力を追加する構想である。従来は深度、熱、低照度、微細構造などを測るために、それぞれ専用のセンサを組み合わせる必要があった。同社は複数の計測機能を1つの再構成可能な光学基盤へ集約し、導入後も能力を更新できるとしている。実現すれば、用途ごとに異なるセンサを作り直す従来の開発方法を変える可能性がある。

マイクロミラーと学習制御による光学前処理

中核となるのは、撮像素子の前に配置された動的な光学層である。微小な可動ミラーが光の進行方向や分布を変え、入射した光へ多数の光学的な変換を加える。固定されたレンズで1枚の画像を形成するのではなく、異なる条件で得た複数の視点を組み合わせることで、通常の光学系では失われる信号を引き出す設計である。

ただし、多数の可動要素を備えた光学系は、部品の個体差や温度、振動などによって状態が変化するため、人手ですべてを設計、調整することは難しい。同社はAIに光学系の挙動を学習させ、取得結果を見ながらミラーの制御と補正を繰り返す閉ループ方式を採用する。これにより、光学系をリアルタイムで自己校正し、環境が変化した場合にも計測条件を調整する。

同社は、この仕組みによって深度や熱情報、微細構造、低照度画像などを単一モジュールで扱う構想を掲げる。生命科学では、細胞を染色、固定せずに薬剤への反応を継続観察し、半導体分野では、ウエハーを切断せずに積層内部の欠陥を検出する用途を想定する。ロボット向けには、周囲の状況に応じて計測方法を切り替え、未知の環境でも自己校正するセンサとしての活用を見込んでいる。

生命科学・半導体・ロボット分野で商用化へ

今回の調達を受け、同社は再構成可能なセンシング技術の商用化を進める。生命科学、半導体検査、ロボットでは、必要とされる波長、解像度、撮影速度、耐環境性が大きく異なる。共通の光学基盤を保ちながら、それぞれの用途で専用センサに匹敵する精度と安定性を示せるかが焦点となる。

CEOのNadav Grossinger氏とCTOのNitay Romano氏は、光学とAIの領域で20年以上にわたり協業してきた。両氏は、Metaが買収したPebbles Interfacesを共同で立ち上げた後、MetaのAR・VR機器に使われる物理センシング技術の開発を7年間主導した経歴を持つ。今回の発表では具体的な顧客名や量産時期は示されていないが、こうした経験を基に、固定された撮像装置から、AIが能動的に計測方法を選ぶセンサへの移行を狙う。


参考文献:

※1:Elio Raises $21M to Build Sensing for the AI Era( リンク

※2:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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