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Argo AIが発表した長距離LiDAR技術

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5月4日、自動運転システムを開発するベンチャー企業のArgo AIが長距離LiDAR技術「Argo Lidar」についての概要を発表した。

この技術により、Arg AIが開発している自動運転システムであるArgo Self-Driving System(SDS)は、最も見えにくい物体を遠くからより正確に検出することで、昼夜を問わず360度の認識が可能で、にぎやかな街路や郊外などを安全に運転することができるようになるという。

2017年にLiDARベンチャーを買収

Argo AIは2017年に、LiDARベンチャーであるPrinceton Lightwaveを買収し、内製で開発を行ってきた。当時、Princeton Lightwaveは防衛・商用マッピング向けにLiDARを提供しており、その技術をベースに自動運転向けにカスタマイズを行ってきたことになる。

ちなみに、Argo AIはフォルクスワーゲンとフォードも巨額の出資を行い資本業務提携をしているが、フォルクスワーゲンの自動運転開発部門であるアウディ傘下のAutonomous Intelligent Driving Gmbh(AID)はArgo AIに統合されていた。

このAIDはLuminar Technologiesと2018年に業務提携をしていたことから、Argo AIとしてはLiDARをLuminarと協業していくのか、Princeton Lightwaveの技術をベースに内製化を続けるのか、その動向が注目されるところであった。今回の発表により、内製化の方向であることが明確となった。

InPベースSPAD×SWIRを使ったLiDAR

Princeton LightwaveのLiDARは、受光部にSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を使った設計となっている。SPADは近年イメージセンサ―で注目されており、複数の企業がLiDARでも活用し始めている。SPADは光の粒子1個が受光素子に入射すると、あたかも雪崩のような増倍によって(これをアバランシェという)、1個の大きな電気パルス信号を出力する電子素子をアレイ状に並べた構造を持つ光センサーである。

Argo AIが使っているInGaAs/InPベースのSPADは小型、低コスト、操作のしやすさなどの実用性に優れており、Argo AIのLiDARに関する過去の講演の中でも、SiベースのSPADに比べて、光子検出率が3~5倍程度高いものとして説明されている。

このInPベースSPADを1,400nmを超える高波長光源と組み合わせることで、Argo Lidarは、長距離、高解像度、低反射率の検出を可能にする。通常のLiDARでは905nmの光源が使われているが、905nmでは出力を上げるとアイセーフティの問題が生じてしまう。一方で1550nmなどの近赤外(SWIR)の波長帯であればやや光学系が複雑になる代わりに、アイセーフティの問題は無く、出力を上げることができ、長距離で低反射率の検出を実現しやすい。なお、このInPベースSPAD×近赤外(1,550nm等)のアプローチは、有力LiDARベンチャーの1社とされるLuminar Technologiesと同じアプローチとなっている。

なお、今回の発表では細かいスペックについては開示されていないが、以下のことがわかっている。

  • 検出距離は400mという長距離検知が可能であるが、前提となる物体反射率は不明。
  • 長距離でも夜の真っ暗な場所でも1%未満の光を反射する車を検知可能。
  • トンネルに出入りするときなど、暗闇から明るい光への瞬間的な移行を可能にしている(よく言われるインテリジェント機能)。
  • 動物などの小さくて動く物体を、植生や静止物体から区別する。

自律配送と配車サービスの広範な商業化を狙う

Argo AIハードウェア開発チームは、すでにこの新しいLiDARについて委託製造業者と協力して、連続生産を行っていることも明らかにした。

Argo Lidarセンサーの最初のバッチ生産分は、Argoの自動運転テスト車両フリートのオンロードテストで実装されている。開発が進む自動運転システムは、ミドルマイルおよびラストマイルの配達、または空港との間の最も需要の高い配車サービスへの適用が想定されており、今後のフォードとフォルクスワーゲングループとの大量生産計画により、自律配送と配車サービスの広範な商業化を実現することを狙う。

Argo AIの創設者兼CEOのBryan Salesky氏はこう述べている。
「私たちは比類のない自動運転技術と運用能力を持っています。私たちの国の首都からマイアミ、シリコンバレーまでの6つの都市で、自動運転システムに関する能力を毎日証明し、配達、小売、シェアリングサービスのパートナーの成長の次の段階を可能にする準備ができています。」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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