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人型ロボットの導入を工場・倉庫へ拡大 Agility Robotics、約4.65億ドルの資金調達を見込む

米国のAgility Roboticsは2026年10月30日、上場を目的とする特別買収目的会社(SPAC)との企業結合などを通じ、約4億6,500万ドルを調達する見込みと発表した。同社は、工場や倉庫で荷物の持ち上げや移し替えを担う人型ロボット「Digit」を開発する。

金額は取引費用控除前で、Churchill Capital Corp XIの信託資金約1億6,400万ドル、Foxconn主導の私募増資約2億100万ドル、受領済みの株式調達資金1億ドルを含む。企業結合は株主承認などを条件に11月4日の完了を予定し、資金を商用展開の拡大に活用する。

物流拠点への横展開とトヨタ系工場での採用

今回の資金調達を支える事業上の進展は、実証から継続的な商用運用への移行である。物流大手GXOでは、既存施設で搬送容器を移動させ、コンベヤーへ載せる作業にロボットを使用してきた。10月26日には提携拡大を発表し、米国内の別の2施設にも展開する計画を示した。2027年初めに従来機で導入を始め、次世代機の商用提供後に移行する予定である。

日本企業との接点では、トヨタのカナダ生産法人Toyota Motor Manufacturing Canadaが、実証を経て2026年2月に商用契約を締結した。ロボットをサービスとして利用する方式で、製造や物流の現場を支援する。日本国内の導入発表ではないが、自動車メーカーの生産現場で人型ロボットの用途を広げる取り組みとして注目される。

以前ATX Researchでも、人型ロボットの技術動向と同社の取り組みを紹介した。現在の焦点は、荷物を運ぶ動作の実現から、複数の施設で安定して運用できるかへ移りつつある。同社が示す6万5,000時間超の実環境での稼働経験は、商用運用や顧客向けプログラム全体での実績であり、次世代機「Digit 5」単独の稼働実績ではない。

周囲の認識と独立した安全制御で支える二足の荷役

同社の技術は、二足で姿勢を保ちながら両腕で荷物を扱い、人向けに設計された通路や作業台を利用するものである。次世代機はカメラ、深度センサー、慣性計測装置を搭載する。画像や距離情報で周囲を捉え、機体の傾きや動きを計測しながら動作を制御する構成だ。移動と荷物の操作を一つの機体で担い、設備間の持ち替え作業などへの適用を目指す。

人の近くで働くため、通常の動作制御とは独立した安全制御を組み込む。複数のセンサーとAIによって人の接近を検出し、回避や停止、着座などの対応を取る設計である。安全上の判断は機体内で行い、通信が途切れても安全機能を失わない構成を採る。作業を実行する制御とは別に、許された動作の範囲を監視する仕組みを設ける点が重要となる。

荷役能力も見直した。次世代機は独自のサイクロイド式アクチュエーターと新しい脚の設計により、最大約22.7キログラムの反復持ち上げを想定する。手先の器具を交換でき、搬送容器の取り扱いから設備への部材供給などへ用途を広げる方針だ。ただし、これらは次世代機の設計・提供計画であり、すべての作業が顧客現場で実用化済みという意味ではない。

既存顧客での拡張を足掛かりとする次世代機の投入

CEOのPeggy Johnson氏はGXOとの提携拡大に際し、「顧客は人型ロボットが働けるかを問う段階から、どこで導入を拡大できるかを決める段階へ移っている」と述べた。同社は次世代機を2027年上期に先行顧客へ納入し、同年末の一般提供を目指す。

今後は、既存施設で得た経験を別の拠点へ移し、導入・保守まで含めた運用を再現できるかが問われる。人との近接作業を可能にする安全性と、顧客が求める処理量や稼働率の両立が鍵となる。11月1日時点では企業結合と関連資金調達は完了前であり、取引の成立と商用展開の進捗を分けて確認する必要がある。


参考文献:

※1:Agility Roboticsによる約4億6,500万ドルの調達見込みの発表(2026年10月30日)(リンク)

※2:GXOとの提携拡大と2施設への展開計画(2026年10月26日)(リンク)

※3:トヨタのカナダ生産法人との商用契約発表(2026年2月19日)(リンク)

※4:Agility RoboticsによるDigit 5の発表(2026年9月15日)(リンク)

※5:共同創業者Jonathan Hurst氏によるDigit 5の設計解説(2026年10月23日)(リンク)

※6:弊社による人型ロボットの技術動向と産業応用の解説(2024年12月23日)(リンク)


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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