ニュース記事

微生物の発酵で高純度の栄養成分を製造するDMC Biotechnologiesが1,800万ドル調達

米国のDMC Biotechnologiesは2026年10月26日、1,800万ドルの資金調達を発表した。同社は、微生物の働きを制御する精密発酵技術を用い、食品やサプリメント、化粧品などに使う高純度の成分を製造する。

今回の調達はInceptional PartnersとSofinnova Partnersが共同で主導し、First Bight Venturesや既存投資家も参加した。資金は、イノシトールなどを扱う原料ブランド「KeyPura」の販売拡大、新たな成分の開発、顧客・流通網の拡充に充てる。

食品原料の商用展開と東洋紡との材料開発

注目されるのは、精密発酵の技術を既存の原料市場に持ち込み、採用を広げようとしている点である。同社は2025年7月に、サプリメントなどに配合するD-カイロイノシトールの商用販売を発表した。2026年4月には原料商社LBB Specialtiesと提携し、ミオイノシトールとともに米国・カナダの食品、栄養、パーソナルケア市場へ供給する体制を整えた。

原料メーカーとして訴求するのは、製造ロットごとの品質の一貫性や、原料の由来を追跡できることだ。当社メディアでも以前、微生物発酵による食品・化学品の製造を取り上げた。同社の今回の調達は、その技術を製品として供給し、顧客の配合・製造工程での採用につなげる段階を支えるものである。

日本との接点では、東洋紡が2025年6月に同社との共同開発契約を発表している。対象は汎用プラスチックの原料となる基幹化合物で、同社の微生物設計と東洋紡の発酵・生産最適化技術を組み合わせ、量産と商業化を目指す。これは栄養成分とは別用途の取り組みであり、今回の調達発表に東洋紡の出資は記載されていない。

微生物の増殖と物質生産を分ける二段階の発酵制御

同社の技術は、微生物の代謝を調整し、狙った成分を効率よく作らせるものである。代謝とは、細胞が栄養を取り込み、成長や物質の合成に利用する化学反応の流れを指す。同社はこの流れを制御し、まず微生物を増やし、その後に目的物質の生産へ切り替える二段階の発酵工程を採用する。増殖と生産を分け、それぞれに適した条件を設定する考え方である。

中核となるのは、特定の遺伝子の働きを抑える技術と、狙ったタンパク質を分解する技術の組み合わせだ。これにより細胞内の反応経路を調整し、目的物質の合成へ流れる原料を増やすとともに、不要な副生成物の発生を抑える。発酵槽の温度などを管理するだけでなく、微生物自身の働き方を変えて生産を制御する点に特徴がある。

同社は、この方法によって培養環境の変化に対する微生物の敏感さを抑え、小規模試験から商業生産へ移行しやすくすると説明する。狙いは、設備の規模を変えるたびに工程を調整し直す負担を減らし、規格に合う原料を安定して製造することにある。ただし、今回の調達発表では製品別の収率や生産原価、年間生産能力は示されていない。

複数の現場で安定稼働を支える運用体制の整備

Jim Flatt最高経営責任者(CEO)は今回の発表で、精密発酵による高品質な原料の開発・製造能力を示してきたとしたうえで、「今後は市場での採用拡大、新製品、長期的な事業成長に注力する」と述べた。既存のイノシトール製品を足掛かりに、健康・美容分野の原料を拡充する方針である。

商業化の進展をみるうえでは、販売先の拡大に加え、顧客が求める品質と供給量を継続的に満たせるかが重要になる。東洋紡との共同開発は、同じ発酵技術をプラスチック原料へ広げる取り組みであり、栄養成分の販売拡大と並行して、その量産化の進捗も注目される。



参考文献:

※1:DMC Biotechnologiesによる1,800万ドルの資金調達発表(2026年10月26日)(リンク)

※2:DMC Biotechnologiesによる精密発酵・代謝制御技術の解説(リンク)

※3:DMC BiotechnologiesによるD-カイロイノシトールの商用販売発表(2025年7月15日)(リンク)

※4:LBB Specialtiesとの米国・カナダ向け販売提携発表(2026年4月7日)(リンク)

※5:東洋紡によるプラスチック原料の共同開発契約の発表(2025年6月4日)(リンク)

※6:弊社の関連記事「注目されるバイオファウンドリーと微生物発酵によるカーボンニュートラルの実現」(リンク)


【世界のフードテックの動向調査やコンサルティングに興味がある方】       

世界のフードテックの動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら