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手首への電気刺激で心房細動の再発抑制へ。StimCardio、3,000万ドルで臨床開発を推進

米国のStimCardioは2026年10月29日、シリーズAで3,000万ドルを調達したと発表した。同社は、手首の神経を電気刺激し、心房細動のカテーテル治療後の再発抑制を目指す装着型医療機器「Rhyvive」を開発している。

調達はMetis MedTechが主導し、Catalyst Health Venturesや事業会社などが参加した。資金は多施設で実施する主要試験「NeuroPulse 2」と、米食品医薬品局(FDA)へのDe Novo申請の準備に充てる。機器は治験段階であり、販売承認・クリアランスは取得していない。

カテーテル治療後の再発抑制を在宅で補うアプローチ

同社が狙うのは、心房細動のカテーテルアブレーション後に残る再発の課題である。アブレーションは、心臓内で異常な電気信号が伝わる経路を遮断する治療だ。同社の機器はこの治療を補完し、退院後も患者が自宅で神経刺激を続ける使い方を想定する。手首に装着するため、刺激のために体内へ電極を埋め込む必要がない。

査読誌Heart Rhythmに掲載された予備試験では、77人を実際の電気刺激群と偽刺激群に無作為に割り付け、主な解析は59人を対象とした。治療後2〜6カ月の評価期間に記録された心房性不整脈の発生件数は、実刺激群12件、偽刺激群243件であった。ただし偽刺激群の1人に多数の発生が集中しており、この患者を除く解析では12件対28件となった。

一方、6カ月時点の不整脈非再発率は90.0%対80.8%で、統計学的な有意差は認められなかった。刺激や機器に関連する重篤な有害事象は報告されていないが、少人数の予備試験である。発生件数の減少と、再発する患者の減少は区別する必要があり、今回の資金は、より大きな試験で有効性と安全性を検証する段階を支える。

正中神経への刺激と心電図計測を組み合わせる仕組み

同社の技術は、手首を通る正中神経への電気刺激によって、心拍の調節に関わる自律神経の経路へ働きかけるものである。心臓を直接刺激するペースメーカーとは作用の経路が異なる。手首の皮膚に接する電極から刺激を与え、交感神経と副交感神経の活動のバランスを調整することで、不整脈の抑制につなげる設計である。

機器には心電図と光学センサーを組み込み、生体信号を取得する。アプリ経由で送られたデータの時間的な変化を解析し、個人に応じた神経刺激へ反映する「閉ループ」の仕組みを開発している。心電図で捉える心臓の電気的活動と、光学センサーによる計測を組み合わせ、記録だけでなく治療への介入につなげる点が特徴である。

ただし、予備試験では決められた治療スケジュールを基本とし、不整脈などの検出後に追加の刺激を行う場合も遠隔での臨床的な確認を経ていた。完全に自動で不整脈を診断し、治療する機能が確立したわけではない。検出精度、刺激の効果、患者が自宅で継続して使えるかをそれぞれ評価する必要がある。

多施設試験による検証と米国での申請準備

CEOのAmir Soltanianzadeh氏は、「非侵襲の神経調節を、心臓電気生理分野の新たな治療カテゴリーとして確立することが私たちの構想である」と述べた。今回の調達によって、多施設での主要試験を実施するための資源を得たとしている。

次の試験では、カテーテルアブレーションへの機器の併用が、アブレーション単独よりも臨床成績を改善するかを検証する計画である。予備試験で示された発生件数の減少を再現できるかに加え、患者単位の再発や在宅での使いやすさも重要になる。規制申請の準備と、臨床的な有用性の確立を進める段階である。


参考文献:

※1:StimCardioによる3,000万ドルのシリーズA調達発表(2026年10月29日)(リンク)

※2:StimCardioによる神経刺激と生体信号計測の技術説明(リンク)

※3:NeuroPulse予備試験の査読論文(Heart Rhythm、2026年9月20日オンライン公開)(リンク)

※4:StimCardioによる臨床研究と機器の開発状況の説明(リンク)


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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