ニュース記事

植物の電気信号から水不足などを捉える技術を開発するElectric Plant Companyが1,120万ドル調達

植物の電気信号を解析する米Electric Plant Companyは2026年10月20日、1,120万ドルのシード資金調達を発表した。Onto VenturesとClimacticが主導し、Ponderosa、Endeavor Catalystなどが参加した。

同社は植物に取り付けるセンサーとAIを組み合わせ、水分ストレスや光合成に関わる状態を継続的に推定する。今回の発表に合わせ、植物の電気信号を学習した基盤モデル「Bombadil」を公開した。同社によると、すでに商用現場で数百個のセンサーを運用している。

植物の内部状態を栽培管理に生かす連続計測

植物の管理では、土壌水分や気象条件、葉の外観が判断材料になる。同社が加えるのは、植物内部の電気信号から得る生理状態の情報である。周囲の環境が似ていても、植物が受ける影響は一様とは限らない。植物自身の反応を継続して追うことで、現場の管理者が水やりや点検の必要性を判断するための材料を増やす狙いである。

事業化では、栽培・植物管理を担う既存事業者への技術提供を進める。センサーの設置から状態の可視化までをつなぎ、管理者が得られた情報を日々の作業に反映できるようにする構想である。公式サイトでは果樹園や樹木作物、森林、都市の緑化管理などを用途として挙げる。ただし、用途の提示と、各用途での効果が検証済みであることは区別する必要がある。

また、同社の公開白書では、推定精度が植物種やセンサーによって異なることも示されている。多数の植物の信号を学習したことは、あらゆる作物の異常を同じ精度で把握できることを意味しない。導入先の作物と環境で、実測値との対応を確かめながら活用範囲を定めることが、事業展開の重要な条件となる。

茎や幹の電位差を読み取るセンサーとAI解析

植物は環境の変化に応じて電気信号を生じ、その信号は組織内を伝わる。同社の方式は、茎や幹に挿入した一対の電極間の電位差を記録し、時間的な変化を解析するものである。電極は信号が伝わる維管束に届くように設置する。葉の表面に装置を貼るだけの方式ではなく、植物種に合わせて挿入深さや電極の形状を変える。

屋外用センサー「Bud」は電池で動作し、毎秒1回の電位測定と低消費電力の無線通信を行う。取得データを一定時間ごとの特徴にまとめ、AIへの入力に用いる。AIは信号の一部を隠して復元する学習を通じ、変動の構造を捉える。その上で、葉の光学・温度計測から得た実測値と対応づけ、光合成や水分ストレスに関わる指標を推定する。

事前学習には、100種・1,400個体超から集めた延べ400万時間超の記録を使用した。これは各センサーの計測時間を合計した値である。共通のモデルに指標を推定する機能を追加する構成により、用途ごとにAI全体を作り直す負担を抑える。ただし、得られるのは生理指標の推定値であり、病気の原因や最適な給水量を自動で確定する技術として実証されたわけではない。

栽培現場への導入拡大と作物ごとの検証

共同創業者兼CEOのJustin Mast氏は、植物内部のデータを用いることで、熟練の園芸家が長年かけて得るような理解を、より広い規模で利用可能にする考えを示した。同社は導入事業者を増やし、作物ごとに適用を広げる方針である。

今後の焦点は、電気信号からの推定を、栽培現場で有効な判断につなげられるかにある。病気の兆候や開花時期の予測は将来の拡張例として示されており、今回の発表で実用化が確認された機能ではない。現場での精度と、管理作業や収量への効果を積み上げる段階である。



参考文献:

※1:同社による1,120万ドルの資金調達とBombadilの発表(2026年10月20日、Business Wire配信)(リンク)

※2:同社の技術白書「Bombadil: A Foundation Model for Plant Electrophysiology」(2026年10月19日)(リンク)

※3:同社公式サイトのセンサー・解析サービスと用途の説明(リンク)


【世界のアグリテックの動向調査やコンサルティングに興味がある方】       

世界のアグリテックの動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら