ニュース記事

電池の高容量化を支えるシリコン負極材料を開発するGroup14が1億5,000万ユーロ調達

米国のGroup14 Technologiesは2026年10月29日、シリーズDの追加ラウンドで1億5,000万ユーロ(同社換算で約1億6,900万ドル)を調達したと発表した。新規投資家の名称は非公表で、シリーズDの総額は6億6,500万ドル超となる。

同社は、リチウムイオン電池の負極に使うシリコン・炭素複合材料「SCC55」を開発・製造する。今回の調達に伴い、スペインのサグントに量産拠点を設ける方針を示した。米国・韓国に続いて欧州でも生産体制を整え、顧客の近くから材料を供給する。

米国・韓国から欧州へ広がる電池材料の供給網

電池材料の事業化では、性能の高さに加え、顧客が必要とする量を安定供給できるかが問われる。スペインの新拠点は、初期段階で10GWh相当の材料生産能力を計画する。ここでいうGWhは、負極材料の供給規模を電池容量に換算した数値であり、完成した電池の製造能力ではない。欧州の自動車・電池産業に近い立地を選び、地域内での供給体制を築く狙いである。

当社メディアでも以前、2025年のシリーズD調達と韓国工場の完全子会社化を取り上げた。当時の米国・韓国での生産拡大に対し、今回の進展は欧州への展開である。発表時点で韓国の10GWh相当の拠点は稼働している一方、米国の20GWh相当の拠点は2027年上期の稼働を見込む。スペインを含む合計40GWhは、計画中の設備を含めた規模である。

日本との接点もある。同社は2021年3月、横浜とソウルへの拠点開設を発表し、それ以前の資金調達に昭和電工が参加したことを説明している。日本の電池・電子機器産業との関係を築いてきた企業だが、今回の追加調達への日本企業の参加や、日本国内での生産計画は公表されていない。

炭素の微細な孔でシリコンの膨張を受け止める材料設計

同社の技術は、電池の負極に蓄えられるリチウムを増やし、高容量化を図るものである。シリコンは黒鉛より多くのリチウムを取り込める一方、充放電に伴う膨張・収縮が大きい。そのまま使うと粒子の損傷や電解液との副反応につながり、容量が低下しやすい。材料の容量を増やすだけでなく、繰り返し使える構造にする必要がある。

そこで同社は、微細な孔を持つ硬質炭素を骨格にし、その内部にナノサイズの非晶質シリコンを収める。粒子内に残した空間が膨張を受け止めるとともに、シリコンが電解液に直接触れる面積を抑える構造である。副反応によるリチウムの損失を減らし、充放電を重ねても粒子の構造を維持することを狙う。製造では、炭素の骨格を先に形成し、その内部にシリコンと空隙を作り込む。

材料は黒鉛との混合や置き換えを想定し、既存のリチウムイオン電池の製造工程への導入を目指す。ただし、材料を変更すれば完成電池の性能が一律に向上するわけではない。Sionic Energyとの技術白書でも、シリコン主体の負極を使いこなすには電極の配合、電解液、セル全体の設計を合わせて最適化する必要が示されている。

顧客に近い生産拠点の整備と量産品質の確立

共同創業者兼CEOのRick Luebbe氏は今回の発表で、電池材料メーカーは電池が作られる地域に立地する必要があるとの考えを示した。スペイン進出を、主要顧客の近くで安定した供給網を築く方針の一環と位置づけている。技術開発に加え、供給拠点の配置が事業拡大の重要な要素となっている。

今後の焦点は、計画した拠点の整備を進め、量産品の品質と供給量を安定させられるかである。電池メーカー側でも材料の評価やセル設計の調整が必要になる。生産能力の拡大と顧客の採用拡大が並行して進むかを見極めることが重要である。



参考文献:

※1:Group14による1億5,000万ユーロのシリーズD追加調達発表(2026年10月29日)(リンク)

※2:Group14によるシリコン負極材料と製造技術の解説(リンク)

※3:Sionic EnergyとGroup14によるシリコン負極の技術白書(2025年12月3日)(リンク)

※4:Group14による横浜・ソウル拠点の開設発表(2021年3月19日)(リンク)

※5:当社メディアによるGroup14のシリーズD資金調達記事(2025年8月25日)(リンク)


【世界の負極材の動向調査やコンサルティングに興味がある方】       

世界の負極材の動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら