ニュース記事

Vatn Systems、米国防衛向け自律型水中ロボットの開発に向けて1,300万ドルを調達

INDEX目次

Vatn Systemsは、米国防衛向けに自律型水中無人潜航機(AUV)を開発する防衛テックスタートアップである。GPSや通信が制限される水中環境でも任務を遂行できる自律性を重視し、迅速な製造と低コスト化を前提とした設計を特徴とする。モジュラー構造を採用することで、用途に応じた構成変更を可能とし、米国および同盟国の海洋防衛ニーズに対応する水中無人システムの実用化を目指している。

同社は、DYNE Ventures主導のもと、1,300万ドルのシードラウンド資金調達を完了した。Lockheed Martin Ventures、RTX Ventures、In-Q-Tel、SAIC Venturesなど、防衛・政府系投資家が参加している点が特徴だ。

調達資金は人材拡充、製造能力の強化、ならびにAUVの市場投入準備に充てられる。来年の実運用を見据え、防衛用途に適した量産体制の構築を進める予定である。

通信に依存しない水中無人作戦の実現を目指す

海洋防衛の現場では、有人艦艇や高価な水中装備への依存が続いており、運用コストや人員リスクが大きな課題となっている。加えて、水中環境ではGPSや通信が制限されるため、遠隔操作に頼る無人機は運用が難しい。迅速な展開と継続的な監視が求められる一方で、柔軟かつ量的に展開可能な水中無人システムが不足しているのが現状だ。

同社は、高度な自律性を備えたAUVを開発することで、通信に依存しない水中作戦の実現を目指している。低コストかつ迅速な製造を前提とした設計により、必要な数を機動的に配備できる点が特徴だ。モジュラー構造を採用することで任務ごとの構成変更も可能とし、防衛用途に求められる柔軟性と拡張性を兼ね備え、水中作戦を自律型無人機で担う仕組みを整えている

実運用を見据えたAUVの設計思想

同社のAUVは、防衛用途での実運用を前提に、設計初期から製造と配備までを一体で考えたプラットフォームとして構築されている点に特徴がある。単機性能の追求よりも、現場投入までの速度や運用継続性を重視し、開発から生産への移行を迅速に行える構成を採用している。

機体はモジュール単位で構成されており、用途や運用条件に応じて機能を組み替えられる設計となっている。これにより、同一プラットフォームを基に異なる任務要件へ対応でき、補修や更新も部分的に行える。結果として、調達後の運用負担やライフサイクルコストの抑制につながる。

また同社は、防衛組織との連携を通じた実地検証を重視しており、開発と運用評価を並行して進めている。技術を研究段階に留めず、配備可能な水準まで引き上げることを重視する姿勢が、今回の資金調達と量産準備にも反映されている。

米国防衛向け自律型AUVを配備するための開発と量産を加速

同社は今後、防衛用途に特化した自律型AUVの実用化を加速させる方針だ。CEOのネルソン・ミルズ氏は、水中領域が現代の防衛において重要性を増す一方で、無人化の余地が大きく残されていると指摘しており、同社のAUVがそのギャップを埋める存在になるとの考えを示している。今回の資金調達を通じて、開発から配備までの時間を短縮し、実運用に耐える水準への引き上げを目指す。

あわせて同社は、製造体制と人材基盤の強化を進め、防衛組織との連携を通じた検証と改良を継続する計画だ。ミルズ氏は、低コストかつ迅速に展開可能な無人システムを提供することが、防衛分野における新たな標準になると述べており、AUVを量的に運用できる体制構築を重視している。研究開発にとどまらず、調達・配備を見据えた事業展開を進めていく構えだ。


参考文献:
※1:Vatn Systems Raises $13 Million Seed Round to Advance Autonomous Underwater Vehicles for US Defenseリンク



【世界のロボティクスの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のロボティクス技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら







  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら