核融合発電のThea Energyが1億ドル調達、出光興産も出資
Thea Energyは、ステラレータ型核融合発電の商用化を目指す米国のスタートアップ。Princeton UniversityおよびPrinceton Plasma Physics Laboratory発の技術を基盤に、量産可能な平面型磁石アレイとソフトウェア制御を組み合わせ、核融合炉の小型化・低コスト化を狙う。長時間安定運転に適した核融合発電所の実現を目指している。
同社はシリーズBラウンドで1億ドルを調達した。US Innovative Technology Fundが主導し、General Innovation Capital Partners、Linse Capital、出光興産、Climate Capital、Emerald Technology Venturesなどが参加。既存投資家のHitachi Ventures、Lowercarbon Capital、Prelude Venturesらも出資した。資金は磁石製造能力の拡大と統合核融合システム「Eos」の建設加速に充てられる。
日本のエネルギー大手も参画、核融合を将来の電力・熱源として探索
今回の資金調達で注目されるのは、出光興産が出資した点である。シリーズB全体ではUS Innovative Technology Fundが主導し、General Innovation Capital PartnersやLinse Capitalなどが参加しており、出光はラウンドを主導した投資家ではない。ただし、日本のエネルギー大手が核融合スタートアップに出資したことは、同技術を将来のエネルギー供給源として探索する動きとして意味がある。
出光側の発表では、今回の出資について、フュージョン技術の動向や事業化の知見を早期から蓄積することが目的と説明している。また、将来的には核融合で得られる電力や熱を、同社が次世代エネルギーとして社会実装を目指す合成燃料、アンモニア、水素の製造に活用する可能性にも触れている。つまり、単なる金融投資ではなく、既存事業や次世代燃料戦略との接続を見据えた戦略的な出資といえる。
AIデータセンターの拡大や産業の電化により、安定的に供給できるクリーン電源への需要は高まりつつある。核融合はまだ商用化前の技術だが、実用化されれば、電力だけでなく産業プロセス向けの熱源としても活用できる可能性がある。今回の出資は、核融合が研究開発テーマにとどまらず、エネルギー企業の長期的な事業ポートフォリオに入り始めていることを示している。
ステラレータ型核融合を量産可能な発電システムへ
核融合エネルギーは、発電時に二酸化炭素を排出せず、燃料資源も比較的豊富な次世代電源として期待されている。近年は、米国や欧州を中心に民間スタートアップへの投資が拡大し、研究機関主導の基礎研究から、商用発電所を見据えた実証開発へと軸足が移りつつある。特にAIデータセンターの電力需要拡大を背景に、安定供給できるクリーン電源として核融合への関心が高まっている。
同社が取り組むのは、磁場で高温プラズマを閉じ込める「ステラレータ型」の核融合炉である。核融合炉には、トカマク型やステラレータ型など複数の方式がある。ステラレータ型は、外部磁場によってプラズマを閉じ込めるため、長時間の安定運転に向くとされる一方、従来は磁石の形状が複雑で、製造や建設コストが高くなりやすい点が課題だった。
同社の差別化要素は、この複雑な3次元形状の磁石を、量産しやすい平面型磁石アレイに置き換えようとしている点にある。さらに、ソフトウェア制御によって磁場を最適化することで、ステラレータ型の安定性を維持しながら、装置の製造難度を下げることを狙う。ハードウェアの複雑さを、より標準化しやすい磁石構造と制御技術で補う発想だ。
同社は現在、統合核融合システム「Eos」の建設を進めており、将来の商用発電所「Helios」につなげる計画を掲げている。米エネルギー省のMilestone-Based Fusion Development Programにも選定され、パイロットプラント設計のマイルストーン認証を受けている。核融合の実用化にはなお時間を要するが、同社の取り組みは、核融合炉を一品物の研究装置から、再現性のある発電インフラへ近づける試みといえる。
商用核融合の実現へ、実証機から発電所開発へ移行
同社は今後、統合核融合システム「Eos」の建設を進め、将来の商用発電所「Helios」につなげる方針だ。出光興産の発表によれば、同社は2027年以降に実証機、2030年以降に商業機の建設および稼働を計画している。今回の資金調達は、平面型磁石の製造能力拡大やEosの開発加速に充てられる。
核融合業界では、研究機関主導の基礎研究から、民間企業による商用発電所の建設計画へと軸足が移りつつある。Fusion Industry Associationによれば、2025年時点で世界の核融合企業には過去12カ月で25億ドル超の新規投資が集まっており、各社は実証機、パイロットプラント、需要家との連携を進めている。
背景には、AIデータセンターの拡大や産業の電化により、安定的に供給できるクリーン電源への需要が高まっていることがある。核融合はなお商用化前の技術だが、実用化されれば電力だけでなく、合成燃料、水素、アンモニア、産業プロセス向けの熱源としても活用できる可能性がある。同社の取り組みは、核融合を研究開発段階から産業インフラへ移行させる動きの一つといえる。
参考文献:
※1:Thea Energy Raises $100 Million Series B Funding to Build Scalable Fusion Power Plants( リンク)
※2:フュージョン(核融合)発電の商業化に取り組むThea Energy社に出資( リンク)
※3:同社HP( リンク)
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