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完成 ナノ粒子を用いた非侵襲型ブレインマシーンインターフェースを開発するSubsenseが1,000万ドルの追加資金調達を実施

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Subsenseは、外科手術を必要としない非侵襲型ブレイン・マシーン・インターフェース(BMI)の開発を行う米国の企業である。独自設計のナノ粒子を鼻腔投与により体内に導入し、血液脳関門を通過させることで、脳活動の記録および調節を可能にする技術を開発している。インプラント型BMIと比べ、安全性やアクセシビリティの向上を目指し、研究開発と臨床応用に取り組んでいる。

同社は、Golden Falcon Capitalからの追加出資により、新たに1,000万ドルを調達し、累計調達額を2,700万ドルに拡大した。今回の資金は、ナノ粒子技術の高度化、生体内での安全性評価、BCI関連ハードウェアの小型化、ならびに製品開発と臨床応用に向けた基盤整備に充てられる予定だ。非侵襲型BCIの実用化を見据え、研究開発体制の強化を図る。

脳に触れず、脳とつながるという発想

ブレイン・マシーン・インターフェース分野では、脳内に電極を埋め込む侵襲型技術が高い性能を示す一方で、外科手術に伴うリスク、長期的な安全性、コストや倫理面での課題が普及の障壁となっている。既存の非侵襲型BCIは安全性に優れるものの、信号解像度や双方向性に限界があり、実用範囲が限定されてきた。同社はこの「安全性と性能のトレードオフ」という構造的課題に直面している。

同社は、ナノ粒子を用いた生体内インターフェースという新たなアプローチにより、侵襲性を抑えつつ高精度な脳信号取得と制御の両立を目指している。鼻腔投与によって脳へ到達するナノ粒子と、独自開発のハードウェアおよび信号処理技術を組み合わせることで、従来の非侵襲型BCIを超える時間・空間分解能を実現しようとしている。手術を不要とする設計により、安全性と拡張性の課題解決を図る。


ナノ粒子で脳信号を捉え、外部とつなぐBCI技術

同社の中核技術は、外科手術を伴わずに脳活動と接続する生体内インターフェースにある。独自設計のナノ粒子を鼻腔投与によって体内へ導入し、血液脳関門を通過させることで脳組織近傍に到達させる。このナノ粒子は脳活動に応答する特性を持ち、従来の外部計測では捉えにくかった神経信号を生体内部から取得する基盤として機能する。

脳内に到達したナノ粒子から得られる情報は、専用のハードウェアを介して外部に読み出され、独自の信号処理技術によって解析される。同社は単なる信号記録にとどまらず、外部からの制御信号を脳へフィードバックする双方向型BMIの構築を進めている。これにより、従来の非侵襲型BMIが抱えてきた解像度や制御精度の制約を克服することを狙う。

同社はナノ粒子、ハードウェア、ソフトウェアを個別技術としてではなく、統合システムとして設計している点に特徴がある。生体内での長期的な安全性や生体適合性の検証を研究開発と並行して進め、実用化を見据えた基盤構築を行っている。手術を不要とする設計は、医療分野にとどまらない将来的な応用展開を可能にする。


ナノ粒子設計とin vivo安全性評価を加速

同社は今後、非手術型BMIの研究開発を加速するため、ナノ粒子の感知性能向上や次世代設計の高度化に加え、生体内での安全性を検証するin vivoバイオセーフティプログラムを重点的に進める方針だ。CEOのテチアナ・アレクサンドロワ氏は、脳と技術を安全に統合するには生体と調和する設計が不可欠だと述べ、ナノ粒子を基盤とする同社のアプローチがその鍵になるとの認識を示している。

あわせて、BMI関連ハードウェアの小型化やシステム開発を進め、製品開発および将来的な臨床応用に向けた基盤整備を行う。アレクサンドロワ氏は今回の資金調達について、非侵襲型BCIという方向性に対する強い支持を示すものだと位置づけ、研究開発と安全性検証のスピードを高めることで、実用化に向けた取り組みを本格化させていく考えを示した。


参考文献:
※1:Subsense Expands Financing to $27 Million to Accelerate R&D for Non-Surgical Brain-Computer Interfacesリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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