米国の核融合企業 SHINE Technologies は、2億4,000万ドルの新規エクイティ資金調達を完了したと発表した。本ラウンドは医療・テクノロジー企業群NantWorksの創業者である Patrick Soon-Shiong氏 が主導し、同氏は同時にSHINEの取締役にも就任する。
投資にはFidelity Management & Research Company、Sumitomo Corporation of Americas、Pelican Energy Partners、Deerfield Management、Oaktree Capital Managementなども参加した。今回の調達により同社の累計資金調達額は10億ドルを超えた。SHINEは核融合反応によって生成される中性子を利用し、医療用放射性同位体の生産や産業用途への応用を進めている企業である。
核融合技術を医療用放射性同位体生産に応用
今回の資金調達で特に注目されるのは、医療分野との連携強化である。本ラウンドを主導したNantWorksの創業者Patrick Soon-Shiong氏は、投資と同時にSHINEの取締役会に参加する。医療・バイオ分野で実績を持つ同氏の参画は、同社の技術が医療領域での応用を視野に入れていることを示している。
両社は今回、がん治療に用いられる放射性同位体 Lu-177 の供給に関する戦略的提携を締結した。Lu-177は、がん細胞に結合する分子に放射性同位体を結合させ、標的細胞に放射線を届ける 放射性リガンド療法(Radioligand Therapy) に用いられる核種である。
放射性リガンド療法は、従来の外部照射放射線治療(EBRT)が全身に広がった腫瘍への対応に限界があるのに対し、放射性同位体を結合した標的分子によってがん細胞へ選択的かつ全身的に放射線を届ける次世代の放射線治療として注目されている。
核融合による中性子生成技術
同社は、核融合反応によって生成される中性子を利用した技術を開発している。同社装置では、重水素と三重水素を用いた核融合反応によって高エネルギー中性子を発生させ、この中性子をさまざまな用途に活用する。
こうして生成された中性子は、電子機器や宇宙機器の耐放射線性能を評価する中性子試験(neutron testing)などに利用される。この試験は、防衛・航空宇宙分野においてミッション・クリティカルな部品の信頼性を確認するために用いられる。
同社はこうした中性子利用技術を基盤に、医療用放射性同位体の生産など、複数の産業分野への応用を進めている。
核融合企業の新たな収益モデル
核融合開発は長期的な技術課題が多く、エネルギー用途の実用化にはなお時間を要するとみられている。そのため近年、核融合企業の間では、発電以外の用途で技術を先行して商業化する動きが広がりつつある。
同社もその一例といえる。同社は核融合反応によって生成される中性子を活用し、医療用放射性同位体の生産や中性子試験などの事業を展開している。こうした産業用途を通じて収益基盤を確立しながら技術開発を進め、将来的な核融合エネルギーの実用化につなげる戦略とみられる。
今回の資金調達と医療分野との連携は、核融合技術をエネルギー以外の産業分野へ展開する新たなビジネスモデルを示す事例ともいえそうだ。
参考文献:
※1:SHINE Completes $240 Million in Recent Funding Led By Dr. Patrick Soon-Shiong Who Joins Board of Directors( リンク)
※2:The landscape for radioligand therapies in oncology( リンク)
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