高マッハ無人機を開発するHermeus、3.5億ドルを調達 生産体制拡張を推進
米Hermeusは、米軍向けの高マッハ無人機や将来的な高速航空機の開発を進める航空宇宙スタートアップである。2026年4月7日、同社は3.5億ドルのSeries Cを完了したと発表した。
ラウンドはKhosla Venturesが主導し、既存投資家に加えて新規投資家も参加した。エクイティに加えてデットも導入しており、同社によれば今回の調達後評価額は10億ドル、累計調達額は5億ドル超である。
資金調達が示す事業フェーズの転換
今回の調達で重要なのは、同社が単に大型資金を確保したことではない。注目すべきは、同社が高速航空機の研究開発を行うスタートアップとしてではなく、高マッハ無人機を継続的に開発し、将来的には供給まで担いうる事業体として評価され始めている点である。資金調達の規模に加え、エクイティとデットを組み合わせた構成や10億ドル評価は、同社が構想段階の企業ではなく、より重いハードウェア事業として見られ始めていることを示している。
さらに今回の発表では、機体開発の前進だけでなく、El Segundoでの試作機能の拡張とAtlantaでの生産移行にも資金を投じる方針が明示された。これは同社事業の重心が、単発の技術実証から、反復的な開発と将来的な供給能力の整備へ移りつつあることを示すものである。今回のニュースは、同社が単に開発速度を強みとする企業であるだけでなく、その開発体制そのものを事業基盤として拡張する段階に入ったことを示す資本政策として読むべきであろう。
段階的な実証で高マッハ領域を目指す
同社の技術的な特徴は、完成形の高速航空機を一足飛びに目指すのではなく、複数の試作機を段階的に開発しながら、高速飛行に必要な要素を順に実証していく点にある。中核にある「Quarterhorse」は、単一機ではなく4機体で構成される開発プログラムであり、各機体に異なる技術課題を担わせながら、学習を積み上げる設計となっている。
足元で中心にあるのはQuarterhorse Mk 2.1である。同社によれば、同機はF-16級のサイズを持つ遠隔操縦機で、可変インレット、デルタ翼、Pratt & Whitney F100エンジンを備える。2026年2月に初飛行を終えており、次の段階として超音速飛行が掲げられている。今回のSeries CでMk 2.2と初のMach 3機Mk 2.3への前進が示されたのも、この段階的実証の延長線上にある。
推進系では、同社はChimeraと呼ぶタービンベース複合サイクルエンジンを開発している。これは低速域ではタービン、高速域ではラムジェットへ移行する構成で、既製ガスタービンを活用して開発期間とコストを抑える考え方である。2022年にはターボジェットからラムジェットへの遷移実証も公表しており、同社技術は単なる高速機の構想ではなく、機体と推進を実機ベースで順次つなぎ込む方式に特徴がある。
継続試験と生産体制拡張が次の焦点
同社の今後に関する評価軸としてまず重要なのは、Quarterhorse Mk 2.1の初飛行を起点とする試験を、単発の成果ではなく継続的な飛行試験の蓄積へ接続できるかどうかである。
Series Cの発表では、同社はMk 2.1の飛行成功を踏まえて超音速飛行が目前にあるとし、F-16級の3機体体制への拡張、Mach 3到達、顧客ペイロード統合を次のマイルストーンとして掲げた。今後の焦点は、こうした目標が実際の試験進捗としてどこまで具体化するかにある。
加えて、今後は技術実証そのものだけでなく、それを支える開発・生産体制の拡張がどこまで機能するかも問われる局面に入る。
発表では、El Segundoに新本社を置いて試作機能を拡張する一方、Atlanta拠点は生産へ軸足を移す方針が示された。創業者兼CEOのAJ Piplica氏が「複数機を同時に製造し、製造能力を拡張する」と述べている通り、Hermeusは単一機の試験を進める企業から、複数機体を並行して回す体制へ移ろうとしている。
今後の論点は、Hermeusが今回の大型調達を、継続的な飛行試験、顧客ペイロード統合、生産能力拡張という具体的な進捗へ転換し、防衛航空企業としての実行力を示せるかにある。
参考文献:
※1:Hermeus Reaches $1 Billion Valuation with $350 Million Raise to Build Today’s Fastest Aircraft for the American Warfighter ( リンク)
※2:$350M to Build the Fastest Aircraft in the World for the American Warfighter ( リンク)
※3:同社HP( リンク)
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