OpenAIがライフサイエンス×AIを本格加速 創薬・医療研究の実装基盤に巨額投資
OpenAIは3月24日、Foundationの重点分野としてライフサイエンスを前面に打ち出した。アルツハイマー病研究、ヘルスケア向け公開データ、高疾病負荷領域での研究加速を進める方針で、今後1年間で少なくとも10億ドルを投じる見込みだ。
同部門を率いるJacob Trefethenは、Coefficient Givingで科学・ヘルスケア分野に5億ドル超の助成を統括してきた人物。10x GenomicsやPalantir、BCGでの経験も持ち、研究資金と医療データ基盤の両面を理解する人材として起用された。
医療AIの応用から研究基盤整備へ踏み込む
今回のポイントは、OpenAIがヘルスケア領域で進めてきた基盤整備の動きを、ライフサイエンス全体へ広げ始めたことにある。弊社が1月に取り上げたTorchのOpenAI合流と「ChatGPT Health」の文脈では、同社は診断や治療の自動化を急ぐというより、医療データを安全に整理し、AIが扱える形に整える土台づくりを重視しているように見えた。今回のFoundation発表は、その流れを研究支援や公開データ整備まで拡張したものと位置づけられる。
注目すべきなのは、対象が個別のAI医療アプリではなく、研究を前に進めるための公開データ、研究支援、疾病領域の加速といった周辺基盤に及んでいることだ。AIを医療に応用するだけでなく、研究そのものが進みやすい環境を整えようとしている点に、今回の特徴がある。
これは、ライフサイエンス×AIの競争軸がモデル性能だけでなく、誰が研究データ、実証環境、研究支援の流れを押さえるかへ広がっていることを示す。同社はモデル提供企業にとどまらず、研究基盤を支える側にも回り始めたと考えられる。
アルツハイマー病研究、公開データ整備、負担の大きい疾患領域の加速を進める
同社は、ライフサイエンス領域で三つの重点分野を示した。第一はアルツハイマー病研究へのAI活用だ。主要研究機関と連携し、疾患経路の解明、臨床や治験で用いるバイオマーカーの特定、治療の個別化を進める。必要に応じて、既存のFDA承認薬の転用も視野に入れる。
第二は、ヘルスケア向け公開データの整備である。AIで医学研究を加速するには、研究者が使える高品質なデータ基盤が不可欠だ。同社は、オープンなデータセットの構築や拡充を支援し、場合によっては非公開データの責任ある公開も後押しすることで、研究環境の底上げを図る。
第三は、死亡率が高く疾病負荷の大きい疾患分野での進展加速だ。十分な資金が届いていない領域も含め、AI研究者と疾患専門家を結集し、まずはワークショップを通じて有望な研究機会を探る方針を示した。個別アプリの開発より、研究そのものを前に進める土台づくりを重視している点が特徴だ。
北米商用化と産業連携で供給基盤に入り込む戦略
今後の方針としては、同社がライフサイエンス、経済的機会、AIレジリエンス、コミュニティ支援を重点領域に据え、今後1年間で少なくとも10億ドルを投じる計画を示した点が柱になる。昨年打ち出した250億ドルコミットメントの初期実装にあたり、今後数か月で新たな助成金やプログラムを順次立ち上げ、進捗も継続的に公表していく方針だ。
あわせて、単発の支援で終わらせないための体制強化も進める。重点領域ごとに責任者を置き、財務や運営を担う幹部を拡充しつつ、全体を統括する執行責任者の採用も進めている。資金投入だけでなく、それを継続的に執行する組織基盤づくりまで並行して進める構えが見える。
参考文献:
※1:Update on the OpenAI Foundation( リンク)
※2:Built to benefit everyone( リンク)
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