沖縄科学技術大学院大学(OIST)発の量子コンピュータスタートアップQubitcore、約15.3億円を調達
Qubitcoreは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究成果をもとに設立された量子コンピュータスタートアップである。イオントラップ技術と微小光共振器技術を組み合わせ、複数の量子処理装置(QPU)を光で接続する分散型量子計算アーキテクチャの開発を進める。誤り耐性型汎用量子コンピュータ(FTQC)の実現を目指す。
同社は、シードラウンドで総額15.3億円を調達した。SBIインベストメントをリード投資家とし、Abies Ventures、ニッセイ・キャピタル、ライフタイムベンチャーズなど計12社が参画した。調達資金は、研究開発体制の強化、実証パートナーの開拓、採用・組織基盤の拡充に充てられる。
量子コンピュータの焦点は、量子ビット性能からQPU間接続へ
量子コンピュータの開発競争は、量子ビット単体の性能向上だけでなく、複数の量子処理装置(QPU)をどう接続し、システムとして拡張するかへ焦点を広げている。FTQCの実現には量子ビット数の拡張が不可欠だが、単一QPUをそのまま大型化するだけでは、制御の複雑化や安定性の低下が課題となる。
同社が掲げるのは、複数のQPUを光で接続する分散型量子計算アーキテクチャだ。これは、量子コンピュータの大規模化を、一つの巨大な量子プロセッサを作るという問題ではなく、「高品質なQPUをいかに接続し、システム全体として拡張するか」という問題として捉える設計思想である。
同社は、微小光共振器を用いた光接続によって、QPU間通信というスケーラビリティの壁を超えようとしている。今回の調達は、量子コンピュータ開発の競争軸が、単体性能からシステム拡張性へ移りつつある流れの中で位置づけられる。
イオントラップと光接続を組み合わせる分散型アーキテクチャ
同社の技術的な中核は、イオントラップ型量子コンピュータの高い量子ビット品質と、微小光共振器による光接続を組み合わせる点にある。イオントラップ型は、電磁場で捕捉したイオンを量子ビットとして利用する方式であり、高いゲート忠実度や長いコヒーレンス時間を実現しやすい。
単一QPU内では、イオンを複数のトラップ領域間で移動させるQCCDアーキテクチャを用いて量子ビット数を拡張する。一方、QPU間では微小光共振器を介してイオンと光子の相互作用を高め、光接続によってモジュール間通信を実現する構想だ。つまり、QPU内部の拡張とQPU間接続を分けて設計している点に特徴がある。
同社の技術的背景には、OISTの量子情報物理実験ユニットにおける研究蓄積がある。同ユニットは単一イオンと光共振器の強結合を実証しており、Physical Review Lettersに掲載された研究では、単一イオンと光共振器の結合強度が原子・共振器の減衰率を上回る強結合領域に到達したことが示されている。
もっとも、同社の自社機としてのゲート忠実度、遠隔もつれ生成レート、光子抽出効率などは現時点で十分に公開されていない。そのため、現段階では「強い基盤技術を持つ統合途上の企業」と見るのが妥当である。
光接続型QPUの性能指標が焦点に
同社の今後の焦点は、分散型イオントラップ量子計算アーキテクチャを、構想段階から実証段階へ移行できるかにある。2026年にはクラウドアクセス対応の試作機、2028年には量子誤り訂正機能を搭載したEarly-FTQC、2029年には複数QPUを光接続した第2世代機の公開を計画している。
これらのマイルストーンでは、単に装置を稼働させるだけでなく、ゲート忠実度、遠隔もつれ生成レート、光子抽出効率、安定稼働時間といった定量指標をどこまで示せるかが重要になる。量子コンピュータ開発がシステム拡張性を問う段階に入るなか、同社が光接続型QPUの実証を進められれば、日本発FTQC開発における存在感を高める可能性がある。
参考文献:
※1:Qubitcore株式会社「OIST発の量子コンピュータスタートアップQubitcore、シードラウンドで総額15.3億円を調達」( リンク)
※2:Hiroki Takahashi et al., “Strong Coupling of a Single Ion to an Optical Cavity,” Physical Review Letters, 2020( リンク)
※3:同社HP( リンク)
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