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MIT発 モジュラー型宇宙インフラを開発するRendezvous Roboticsが300万ドルを調達

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MIT発のRendezvous Robotics は、再構成可能な宇宙インフラ「TESSERAE」を開発するスタートアップ。同社のソリューションは、平板モジュール(タイル)を宇宙に打ち上げ、自律的にドッキング・分離させることで、宇宙空間での組立、再構成、修理、拡張を可能にする。これにより、通信アンテナ、太陽電池アレイ、放熱パネルといった大型構造を柔軟に構築でき、ミッション変更や機能追加に対応できる宇宙インフラを実現する。

2025年9月10日、同社はAurelia Foundryと8090 Industriesがリードするプレシードラウンドで300万ドルの資金調達を発表。ATX Venture Partners、Mana Ventures、複数のエンジェル投資家も参加した。今回の資金は、研究開発チームの拡充、プロトタイプから商用レベルへの製品化、国際宇宙ステーション(ISS)で予定されている実証実験に向けた技術開発に充てられる。

宇宙空間で組み立てる新しいインフラ構想  

宇宙開発では、通信アンテナや太陽電池パネルといった装置は、サイズが大きいほど通信性能や発電量が向上する。そのため、本来はできるだけ大きな構造物を軌道上に展開したいが、現状ではロケットの搭載スペースに制約があり、サイズと形状に厳しい限界がある。加えて、一度設置した構造物は再構成や拡張が難しく、故障時の修理やミッション変更への対応には高いコストと時間を要する。 

同社は、こうした制約を乗り越えるため自律的に組み立て可能なモジュラー型宇宙構造システム「TESSERAE」を開発している。平板状のモジュールタイルを打ち上げ、宇宙空間で自律ドッキングさせることで、大型アンテナや太陽光パネルなどを軌道上で組み立てられる。さらに、必要に応じて構造を分離・再構築し、機能追加やアップグレードを可能にすることで、宇宙インフラを長期的に進化させられる点が特徴だ。

MIT発の自律ドッキング技術で実現するモジュラー型宇宙インフラ

同社が開発する「TESSERAE」は、宇宙空間で自律的に組み立てられるモジュラー型宇宙構造システムだ。MITで宇宙建築(Space Architecture)を研究していた創業者 Dr. Ariel Ekblaw によって発明され、Aurelia Institute での研究開発を経てスピンアウトした技術である。 

打ち上げ時には平板状のタイルモジュールとしてコンパクトに積み込まれ、軌道上で自律的に展開・接続して構造物を形成する。タイル同士は電磁ラッチで接続され、必要に応じて分離・再配置が可能。これにより、組立ロボットや宇宙飛行士の長時間作業に頼らず、大型アンテナや太陽光パネル、放熱器といった構造を柔軟に構築できる。 

各モジュールにはセンサー、プロセッサ、バッテリーが搭載され、宇宙環境下での自己位置認識と接続制御を行う。さらに、swarm robotics(群制御)の技術を活用し、複数のモジュールが協調して最適な形状を形成する。設計は拡張性とメンテナンス性を重視しており、長期ミッション中でもモジュールを追加したり、故障部分を交換したりできる。 

ISSデモから商用化へ

今回の資金調達により、同社はプロトタイプから実運用レベルへの移行を加速させる。2026年初頭にはISSでのモジュール組立デモ、同年後半〜2027年にかけてはISS外での展開試験を予定しており、実用規模の構造体を軌道上で組み立てられることを示す計画だ。

ターゲット市場は、地上の小型アンテナと通信するための大規模アンテナアパーチャ、国防やリモートセンシング向けの高感度観測ミッション、軌道上発電や宇宙望遠鏡など「サイズが性能を決める」用途。再構成可能なモジュール技術によって、これらの分野で柔軟にスケールを拡張できることが大きな価値となる。

創業者兼CEOのDr. Ariel Ekblaw 氏は
「打ち上げ制約を超え、宇宙空間で構造物を自由に設計・再構成できる世界を実現することが私たちのビジョンです。TESSERAEはその第一歩であり、今回の資金で技術成熟とISSでのデモを加速します。最終的には通信ネットワークや軌道上発電所など、進化し続ける宇宙インフラをモジュラー方式で構築したいと考えています」と述べ、宇宙インフラを固定的なものではなくアップグレード可能なものとして再設計できる点を強調した。

投資家からも期待の声が寄せられている。Aurelia Foundry のパートナーは
「Rendezvous Robotics のアプローチは、宇宙構造物の設計と運用の常識を塗り替えるポテンシャルを持っています。再構成可能なモジュールシステムは、コスト削減と柔軟性の両面でブレークスルーとなり、次世代の宇宙経済の標準になるでしょう」とコメントしている。




参考文献:
※1:Rendezvous Robotics exits stealth with $3M to build reconfigurable space infrastructure(リンク

※2:同社公式HPリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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