核融合開発の米Realta FusionがシリーズAで53億円を調達。磁場でプラズマを閉じ込める方式でコンパクト・拡張性ある発電を目指す

米核融合開発スタートアップのRealta Fusionは2025年5月13日、シリーズA資金調達ラウンドでの$36m(約53億円)の確保を発表。同社は、応募額を超過した調達額であると説明している。
Realta Fusionは2022年、Kieran Furlong CEOやCary Forest最高戦略責任者(CSO)ら合計5人が共同創業者となり、設立。共同創業者のうち、4人は技術関連の博士号取得者で、Furlong CEOもMBA取得者という構成となっている。
2024年に磁気ミラー方式の実証に成功
CEOのFurlong氏はウィスコンシン大学マディソン校が設立したシンクタンクでシニアフェローを務めた過去があり、CSOのForest氏は現在も同校物理学部の教授を務める。研究を基に、米エネルギー省エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)が資金を注入し大学からスピンアウトしたのが、Realta Fusionだ。
核融合には、プラズマを使った「地場閉じ込め方式」とレーザーを使った「慣性閉じ込め方式」の2種類があるが、Realta Fusionはこのうち前者の開発を進める。核融合を行う装置の両端に強力な磁石を置き、装置の中央へいくに従って磁場が弱くなる設計。プラズマの荷電粒子が磁石によって反射され、装置の中央に閉じ込められる仕組みだ。
Realta Fusionは、こうしたプラズマ閉じ込めの手法を「磁気ミラー方式」と名付け、また閉じ込めた状態を「ボトル型」と形容する。
他の核融合開発スタートアップと同様、コスト面の優位性をアピールするが、それとともにコンパクトであること、拡張性も訴求する。磁気ミラー方式は比較的、シンプルな構造であることがコンパクト化にも寄与。さらに、プラズマ閉じ込め長もある程度、柔軟にできるため拡張できたり核融合発電装置をモジュール化できたりが可能だ。
Realta Fusionは2024年7月、ウィスコンシンHTS軸対称ミラー(WHAM)実験を行い、プラズマの閉じ込めと保持に成功したと発表。磁気ミラーを実証できたということであり、シリーズAの調達にも大きく影響したと見られる。
WHAM実験を行った機器(Realta Fusionプレスリリースより)
州内のエネルギー需要拡大も背景に
シリーズAは、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。新規投資家ではウェブホスティング会社のSiteGround、既存投資家ではウィスコンシン大学同窓会研究財団などが応じた。
資金は、実験を基にしたプラズマ閉じ込めをシミュレーションできる体制の構築に利用し、2028年までのプロトタイプ稼働を目標にすると、Furlong CEOのコメントとしてプレスリリースで明らかにされている。
また、資金調達を報じたTechCrunchによると、ウィスコンシン州ではデータセンターの建設によってエネルギー需要が拡大。州議会が、原子力産業の誘致を進めていることも背景にあると解説した。
同記事でFurlong CEO は「われわれが避けたいのは、少数の企業が大失敗して、業界全体の成功を台無しにしてしまうことだ。すべての(核融合開発)企業の成功を祈っている。もちろん、(現実には)すべてが生き残るわけではないだろう」とコメントを寄せている。
米国だけでなく世界全体で進む核融合開発での生き残りの厳しさを表す、コメントといえるだろう。
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