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米小型原子炉開発のRadiant IndustriesがシリーズCで155億円を調達。原子炉プロトタイプの完成に向けて資金活用

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米国の商用小型原子炉メーカーのRadiant Industriesが2024年11月14日に行われた、$100m(約155億円)のシリーズC資金調達ラウンドについて明らかにした。今回の調達は、Radiant Industriesが行ったパッシブ冷却方式のデモンストレーションに対応したもの。

Radiantは、民間宇宙業界出身のDoug Bernauer氏らが2019年に設立。超高温方式の小型原子炉「Kaleidos」を開発する。

工場組み立て小型原子炉の市場投入が目前、とCEO

RadiantのKaleidos炉は、箱形の1メガワット級原子力発電装置だ。軍事施設や遠隔地の施設、データセンター、EV充電施設などへ二酸化炭素(CO2)を排出せずに電力を供給する。冷却方式は空冷であり、溶融防止燃料の「TRISO」を使い放射性物質の排出を防ぐ。

本体は陸路や海路、空路を使って輸送することが可能で、わずか数日で設置できるメリットがある。さらに、一つの原子炉で20年の使用を見込み、その間、4回の燃料交換を想定。発電する場所に放射性廃棄物を残さない点を訴求する。

前述のようにシリーズCの直前の同年10月15日、パッシブ冷却方式のデモンストレーションを実施した。これは燃料を投入しないで行われるテストであり、2026年にはアイダホ国立研究所(INL)にて原子炉のフェイルセーフ機構や独自の半自動制御システムの評価を含む包括的な試験プログラムを実施する予定である。INL内の実証用テストベッド施設(DOME)に同社のKaleidosプロトタイプ機を納入し、試験を行う計画だ。

この点で、今回のシリーズCにあたってCEOを務めるBernauer氏は「新しい原子力はすぐそこにある」とコメントしている。

Radientが2024年の実証時に公開した動画

目指すのは「クリーンで信頼性が高く手ごろな価格のエネルギーを遠隔地に」

今回のシリーズCは、ベンチャーキャピタル(VC)を中心とした投資家が応じた。一方、米石油大手Chevronのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるChevron Technology Venturesも投資に参加。Radiantのこれまでの資金調達総額は、$160m(約248億円)に達した。

資金は、Kaleidosプロトタイプの完成に向けて使われる他、製造工場の土地買収や建築費にも活用されるという。この工場では、年間最大50基の原子炉生産を行う予定だ。

Radiantの取締役であるRachel Slaybaugh氏は、「クリーンで信頼性が高く、手頃な価格のエネルギーを、通常の方法ではアクセスが難しいような遠隔地にも供給できる製品を開発している」とし、「現在のところ、順調に開発スケジュールを進めて主要なマイルストーンは達成しており、商品化に向けて他社より一歩リードしている」と胸を張った。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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