レーザーウラン濃縮スタートアップのLIS Technologiesが68億円を調達。米国発の技術・企業であることをアピール

米国のレーザーウラン濃縮スタートアップであるLIS Technologies(以下、LIST)は2025年5月19日、総額$47m(約68億円)超の資金調達の完了を発表した。同社の説明によると、3回に分けた調達の総額であり、各回とも募集額を超過したという。
LISTは2023年に設立。Atomic Energy Corporation of South Africa(現Nesca。南アフリカの原子力公社)などに在籍したChristo Liebenberg CEO兼COOと、Science &Technology Associatesなどに勤務しつつ長年、レーザー濃縮に取り組んできたJeff Eerkens CTOの2人が共同創業者となっている。
U-235だけを励起させ燃料に
レーザーウラン濃縮は、現行の濃縮法である遠心分離法や、従来、利用されていたガス拡散法と比べ、低コストで放射性廃棄物を削減できるため、原子力発電の世界で期待が寄せられている。
こうした中でLISTが開発を進めるレーザーウラン濃縮は、凝縮抑制同位体選択レーザー活性化(CRISLA)と呼ばれる方法である。前出のEerkens CTOが生み出したもので、すでに米国において特許を取得した。
CRISLAは、最初にウランをフッ素と結合させた六フッ化ウラン(UF6)を用意。そこに短波長かつ高エネルギーのレーザーを当てると、U-235だけが励起され、回収するという仕組みだ。U-235は核分裂しやすいウランの同位体であり、原子力発電に利用できる。
LISTは、オフィシャルサイトのトップページをはじめとして、「米国発」の企業、技術であることを強調する。いつからこうした広報戦略を採っているかは分からず、またTrump政権を意識したものであるかも不明だ。
もっとも、海軍艦船の燃料として利用されることも企図しているため、単に安全保障面や核燃料としての安全性の面で、マーケットに受け入れてもらうための戦略とも受け止められる。
このように濃縮したウランは、原子力艦船のエネルギー源や現行の原子炉、小型モジュール炉(SMR)、医療用同位体などで使われることを目指す。
資金調達後の5月27日、LISTの規制およびライセンス担当ディレクターに、米エネルギー省などに在籍したJulie Olivier氏が就任したことの発表があった。さらに、翌6月3日には、半導体装置のASMLでエンジニアを務めたLukasz Urbanski氏が安定同位体レーザープログラムのディレクターに就任したことの発表が行われた。
Olivier氏(左)とUrbanski氏(LISTプレスリリースより)
後述するように、直近で得た資金は人材確保に使われるとしており、その一環と見られる。
参加した投資家はVC1社のみ実名を公表
最新の資金調達は、ベンチャーキャピタル(VC)の具体名1社を挙げた以外は、投資家の名前が明かされていない。一方、プレスリリースの中で「先進原子力技術分野の著名な経験豊富な業界投資家からの継続的な支援を得た」との説明があり、戦略的投資家が存在する可能性も否定できない。
Liebenberg CEOは「今回の資金調達により、当社は事業拡大を継続し、シニアテクニカルエンジニアや規制リーダーを増員し、当社の成長目標達成に不可欠な実証活動により近いプロジェクトを迅速に推進することが可能になる」とコメント。
その後、宣言通りの人材確保が行われたのは、前述の通りだ。
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