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Quantum Motion、シリコン量子コンピュータ開発に向け1.6億ドルを調達

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Quantum Motionは、シリコン量子コンピュータの開発を手がける英国のスタートアップ。既存の半導体チップにも使われるシリコントランジスタ技術を基盤に、量子ビットを標準的な半導体製造プロセスに近い形で作ることを目指す。量子コンピュータを大型の研究装置ではなく、既存データセンターに導入可能な計算インフラへ近づけることを狙う。

同社はシリーズCラウンドで1億6,000万ドルを調達した。DCVCとKembaraが共同主導し、British Business Bank、Firgunが新規投資家として参加。既存投資家のOxford Science Enterprises、Inkef、Bosch Ventures、Porsche Automobil Holding SE、Parkwalk Advisorsも出資した。資金は商用量子コンピュータの開発と展開加速に充てられる。


データセンターに量子コンピューターを組み込む

同社の特徴は、量子コンピュータを特殊な研究設備ではなく、既存データセンターに導入可能な計算インフラとして設計しようとしている点にある。現在の量子コンピュータは、装置サイズ、冷却設備、消費電力、運用コストが大きく、商用利用に向けた大規模化が課題となっている。

同社はこの課題に対し、既存の半導体産業で培われたシリコントランジスタ技術を活用する。量子ビットを標準的な半導体製造プロセスに近い形で作ることで、将来的な量産性やコスト低減を狙う。これは、量子コンピュータを一品物の実験装置から、再現性を持って製造できるチップ技術へ近づける試みといえる。

今回の発表で同社は、シリコントランジスタベースのアプローチにより、他方式と比べてコストと設置スペースを100分の1、エネルギー消費を1,000分の1に削減できる可能性があるとしている。実現すれば、量子コンピュータを専用施設に置くのではなく、標準的なデータセンターラックに組み込む道が開ける。

シリコン量子ドットをCMOS製造基盤で集積

同社の技術の中核は、半導体産業で広く使われている300mm CMOSウェハ技術を活用し、量子プロセッサを製造する点にある。量子ビットには、シリコン量子ドットを用いたスピン量子ビットを採用している。既存の半導体製造基盤に近いプロセスを用いることで、微細加工技術や品質管理の知見を量子チップ開発に取り込もうとしている。

シリコン量子ドットでは、電子のスピン状態を量子ビットとして利用する。シリコンは現在の半導体産業で成熟した材料であり、微細な構造を高精度に形成できる点が強みとなる。同社は、CMOS互換のアーキテクチャを用いることで、量子ビットを高密度に集積し、将来的な大規模化につなげることを目指している。

また、同社は量子プロセッサ単体ではなく、制御機器やソフトウェアを含むフルスタック型のシステムとして開発を進めている。プロダクトページでは、量子アルゴリズム開発用のソフトウェアスタックに加え、制御や較正を効率化するAI/機械学習ベースのチューニング機能も示されている。多数の量子ビットを安定して動作させるには、ハードウェアだけでなく、制御・補正・較正を含む運用技術が重要になる。

同社のアプローチは、量子コンピュータの性能向上だけでなく、製造・制御・運用までを一体で設計する点に特徴がある。半導体製造技術を基盤にしながら、量子プロセッサ、制御装置、ソフトウェアを統合することで、将来的なフォールトトレラント量子コンピュータの実現を目指している。

量子コンピュータの商用展開へ、製造・実装体制を強化

同社は今回の資金調達を通じて、商用量子コンピュータの開発と展開を加速する方針だ。シリコンCMOS技術を用いた量子プロセッサの製造体制を強化し、既存の半導体製造インフラを活用しながら大規模化を進める。研究室内の実証装置にとどめず、実際の計算インフラとして提供することが今後の焦点となる。

同社は、半導体チップの受託製造を手がけるGlobalFoundriesとの連携を通じて、量子プロセッサの製造体制を強化している。発表によれば、GlobalFoundriesの製造基盤を活用し、0.1平方ミリメートル未満の領域に1,024個の量子ドットを集積したチップを製造している。量産性や集積度を高めるうえで重要なステップとなる。

量子コンピュータ業界では、量子ビット数や演算性能に加え、製造可能性、エラー訂正、冷却、制御システムの統合が競争軸になっている。創薬、材料開発、金融、最適化などでの活用が期待される一方、実用化には技術的なハードルも残る。同社の取り組みは、半導体製造基盤に乗る商用計算インフラへ近づける試みといえる。


参考文献:

※1:Quantum Motion Raises $160 Million Series C to Deliver Quantum Computing’s “Transistor Moment”( リンク

※2:Quantum Motion Announces Record Integration of Quantum Devices and Partnership with Semiconductor Manufacturer, GlobalFoundries( リンク

※3:同社HP( リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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