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先進的な義肢とプラットフォームを開発する米Phantom NeuroがシリーズAで27億円を調達。義肢使用者の「幻肢」で作動

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米国のヒューマンマシンインターフェース(HMI)関連スタートアップであるPhantom Neuroは2025年4月15日、シリーズA資金調達ラウンドでの$19m(27億円)の確保を発表した。

Phantom Neuro は2020年、ジョンズ・ホプキンス大学医学部からスピンアウトする形で設立。本社をテキサス州オースティンに置く。

2025年3月にFDAから2つの指定を取得

事故や病気などにより手足を失ってしまっても、そこにつながっていた終末神経は身体に残る。そのため、「幻肢」という失った手足の感覚が残るケースがあり、痛みを感じる事例も見られる。

今回の資金調達を報じたTechCrunchによると、Phantom Neuroはこの幻肢を活用しているという。ストリップと呼ばれる部分(インプラント型のセンサー)が神経の発する情報を読み取り、さらにPhantom Neuroのソフトウエアがそれを解析。そして、神経の指示通りに義肢を動かす。同社は、義肢の動きの精度は94パーセントであると訴求。また、10分間の調整をするだけで、手足を失った人の身体機能を85パーセント、回復できるという。

この他、Phantom Neuroのウェブサイトでは、スマートフォンやスマートウォッチなどモバイルデバイスとの連携、人工知能による意思の解析や動作の実行、ロボット(この場合はある程度、自律的に動く義肢を指すと見られる)といった技術を有すると説明。米国に存在する約40万人の上肢切断者、約160万人の下肢切断者、約5000万人の高齢者のソリューションになれると、アピールする。

2025年3月には、ここまで取り上げたプラットフォームが米食品医薬品局(FDA)のBreakthrough Device Designation(画期的デバイス指定)とTargeted Acceleration Pathway(TAP)を取得した。画期的デバイス指定は、従来品と比べ飛躍的な改善を見込めるため、FDAが支援を行うもの。TAPは、未承認の薬品・デバイスを特定の条件下で限定的な使用を認め、製品化を促すものだ。

同業大手が資金的・商業的支援へ

シリーズAはドイツの義肢大手であるOttobockが主導。他、VCが応じた。また、OttobockからPhantom Neuroに対し、ナレッジの提供や商業化の支援を行い、取締役に充てる人材を派遣する模様だ。

資金は、前臨床試験や申請などに使われる。

Phantom Neuroの創業者兼CEOであるConnor Glass氏は、以下のようにコメントした。

「Ottobockは数十年にわたり、何百万人もの人々の移動能力回復の最前線に立ってきた。同社とのパートナーシップにより、Phantom X(プラットフォームの名称)の市場投入を加速させ、義肢が真に人体の自然な延長として機能する未来への基盤を築くことができる」

Connor Glass共同創業者兼CEO(Phantom Neuroプレスリリースより)



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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