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鉄道貨物輸送の技術開発を行う米Parallel SystemsがシリーズBで55億円を調達。「完全商業化に向け準備」とCEO

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米国で先進的な鉄道貨物輸送の技術を開発するスタートアップ、Parallel Systemsが2025年4月14日、シリーズB資金調達ラウンドでの$38m(約55億円)の確保を発表した。

Parallel Systemsは2020年、Lockheed Martin、Northrop Grumman、SpaceXなどでエンジニアを務めたMatt Soule CEOらによって設立。カリフォルニア州に本社を置く。

機関車のない鉄道貨物輸送

米国トラック協会の2024年の発表によると、金額ベースでの国内トラック輸送の規模は$1trillion(約143兆円。2025年4月レート)近くに上る。この点で、Parallel Systemsは自社のビジネスモデルを「$900b規模の米国トラック輸送の一部を鉄道輸送に転換するためのツールを提供すること」と掲げる。

読者はここで、電気機関車が貨車を牽引する鉄道輸送を思い浮かべるかもしれない。このようなトラック輸送から環境性能の高い鉄道輸送に転換することは「モーダルシフト」と呼ばれ、各国で進められている。

しかし、Parallel Systemsが行おうとしているのは、単なるモーダルシフトにとどまらない。まず、以下の動画をご覧いただきたい。

Parallel Systemsの事業紹介動画

日本の鉄道輸送の感覚でいえば、貨車が自律的に動いているように見える。そのイメージでおおむね正しく、台車部分にバッテリーや駆動関係の装置を搭載。また、1台の車両に付き数千個のセンサーを搭載しているといい、自律的な運行につなげる。

一方、センサーがあったとしても鉄道の車両は制動距離が長くすぐに止まれないのでは、との疑問を持つ読者もいるかもしれない。この点でParallel Systems は、他の鉄道用車両とは異なる「高帯域油圧ブレーキシステム」を利用しており、迅速に停止することが可能だとしている。

先ほども取り上げた、Parallel Systemsのビジネスモデルについての文言に、米国トラック輸送の「一部を」鉄道輸送に転換、とあった。同社はトラック輸送との共存を目指していると見られ、鉄道脇にクレーンを設けた簡素なターミナルを構築する構想を持つ。鉄道と道路を並行させ、トラックと貨物列車との間で荷物を積み下ろす際も、シンプルに行おうとしていると見受けられる。

他、日本国内でよく見られる、開かずの踏切の状態とならないよう、適宜、貨車の隊列を分離させ自動車交通を通す方法も検討している。1台ごとの車両が自律的に動ける特徴を生かしたものだ。

オーストラリアでも事業展開へ

シリーズBで投資家側の中心となったのは、投資会社、ベンチャーキャピタル(VC)であったようだ。資金は、戦略的パートナーとともに事業推進していくため活用するとしており、発表では米国だけでなくオーストラリアでも事業展開すると明言した。

CEOのSoule氏は、「Parallel Systemsはジョージア州で連邦鉄道局の承認を得たプロジェクトを皮切りに、電気鉄道システムの完全商業化に向け準備を整えている」とコメント。ジョージア州での承認とは、同州での商業試験運行に当局からゴーサインが出たことを指す。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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