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米核融合スタートアップ Inertia Enterprises が4億5000万ドルを調達、商用化に向けて前進

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米核融合スタートアップ Inertia Enterprises は2026年2月11日、核融合発電の商業化に向けて4億5,000万ドルを調達したと発表した。

同社は、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の National Ignition Facility(NIF)で実証されたレーザー核融合(ICF)を基盤とし、実験装置レベルの点火成果を発電用途へ転換することを目的とする。調達資金は、高繰り返しレーザーシステムの開発、燃料ターゲットの量産体制構築、将来的な商用プラント設計に充当される計画である。

レーザー核融合が本格化へ

同社の4.5億ドル調達は、NIFで実証されたレーザー核融合を研究から発電設備へ転換するための資本投入である。焦点は物理の成立性ではなく、連続運転可能な装置への工業化に移っている。

この動きは米国の国家戦略と同調している。米エネルギー省(DOE)は2025年10月に核融合科学技術ロードマップを公表し、2030年代半ばまでに核融合発電を送電網に接続することを目標に公共投資と民間の革新を連携させる戦略を打ち出した。ロードマップは技術ギャップを埋め、産業基盤を構築し、官民パートナーシップで商用化を加速する道筋を示している。

同社が集めた資金はこの国家戦略の狙いと重なっており、単発実験から継続運転可能な施設へ進めるための装置化・量産化フェーズに入ったことを象徴する。核融合は科学実証段階から設備投資フェーズへシフトしつつあり、政策と民間資本の時間軸が揃い始めた点が本件の意義である。

連続運転を前提としたレーザー核融合の装置化

同社は、NIFで実証されたレーザー核融合(ICF)を出発点に、物理実証を発電装置としての連続運転へスケール変換することを主眼に置く。研究設備の延長ではなく、商用電力接続を前提とした工業設計を志向している。

技術の中核は、高繰り返し運転に対応したレーザーシステムと、核融合燃料ペレットの量産・供給基盤である。レーザーは単一の巨大装置ではなく、複数ビームを統合する構造を志向し、冗長性・保守性・量産性を重視したアーキテクチャを採る。

燃料ペレットについても、研究用途の試作ではなく工場生産を前提とした標準化と大量供給を進める方針だ。発電用途では高いショットレートが不可欠であり、レーザー性能とペレット供給を同時に工業スケールへ引き上げられるかが成立条件となる。

商用化に向けた条件整備が進む

同社は、実証済みのレーザー核融合を商用発電へ転換するため、レーザー、燃料ターゲット工場、将来的なギガワット級発電所までを含む工程を構築する方針を示している。CEOのジェフ・ローソンは、技術とサプライチェーンを同時に整備する必要性を強調した。

中核となるのは「Thunderwall」と呼ばれる高平均出力レーザーの開発と、燃料ターゲットの量産ライン構築である。10キロジュール級ビームを毎秒10回照射する設計を掲げ、研究装置ではなく反復運転を前提としたシステム化を目指す。

Chief Scientistのアニー・クリッチャーは、単発の点火実験にとどまらず、再現可能な結果が得られる段階まで進展したことを強調し、今後はその物理成果を商用規模の発電システムへと落とし込む工程に注力すると述べた。

CTOのマイク・ダンも、実証済みの物理、政策的支援、そして十分な規模の民間投資という三つの条件が揃いつつあると指摘し、商用化に向けた環境が整い始めているとの認識を示している。


参考文献:

※1:Inertia raises $450 million to commercialize the only proven fusion scienceリンク

※2:同社HPリンク

※3:The Fusion Science & Technology (S&T) Roadmapリンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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