カゼイン生産の仏Standing Ovationが3420万ドルを調達、Danone Ventures、Bel Groupも出資
Standing Ovationは、精密発酵を用いて乳タンパク質の主成分であるカゼインを生産するフランスのフードテック企業である。乳清などの副産物を活用し、動物由来と同等の機能性を持つタンパク質を低環境負荷で供給することを目指す。自社工場を持たず既存の発酵設備を活用することで、商用化と量産拡大を進めている。
同社は2026年3月31日、総額3,420万ドルのSeries Bを発表した。調達総額は3,420万ドルで、株式発行による2,850万ドルに加え、補助金・融資などによる570万ドルも確保した。調達にはBpifrance、Crédit Mutuel Innovation、Danone Ventures、Bel Groupなどが参加。調達資金は主に北米での商用化加速に充てられ、その後欧州・アジア展開も見据えている。
食品大手の出資が示す実装フェーズへの移行
今回の調達で注目すべきは、Danone VenturesとBelが資本参加した点だ。これは有望なフードテック企業への財務投資というより、既存乳業が次世代の供給基盤を押さえにいく動きと見るべきだ。実際、同社は今回の資金を北米での商用化加速に充て、2027年以降の欧州・アジア展開も視野に入れている。
特にBelは、Standing Ovationと乳由来副産物の活用で連携を進め、工業スケールでの初期生産サイクルの有効性確認まで公表している。つまり出資に先立って、すでに自社サプライチェーンへの組み込み可能性を検証してきたことになる。Danone側も乳サプライチェーンの持続可能性と強靭化を継続課題として打ち出しており、今回の出資はその延長線上にある。
重要なのは、精密発酵が既存乳業の外側にある代替技術ではなく、供給不足や環境制約を補完するインフラ技術として扱われ始めていることだ。同社は、消費者向けブランドではなく、既存の乳業・食品産業に素材を供給するB2Bプレイヤーである。DanoneやBelの資本参加は、この技術が実験的な選択肢ではなく、将来の供給網を支える現実的な実装先として見られていることを示す。
既存乳業を補完する乳タンパク技術
同社技術の核は、精密発酵によって乳タンパクの主成分であるカゼインをつくる点にある。会社説明では、このタンパク質は動物由来の乳タンパクと分子レベルで同一で、チーズの伸びやクリーミーさ、ヨーグルトの食感、ミルクフォームの泡立ちといった乳製品特有の機能を再現できるとされる。つまり植物素材で“近づける”のではなく、機能の源泉そのものを再現する発想だ。
同社の商材は消費者向け食品ではなく、乳業・食品メーカー向けのB2B素材である。既存の乳製品や代替乳製品に組み込めるため、既存サプライチェーンとの親和性が高い。用途もチーズ、ヨーグルト、アイス、バリスタミルク、高タンパク食品など幅広く、単一商品ではなく、複数カテゴリーに展開可能な基盤素材として位置づけられている。
北米商用化と産業連携で供給基盤に入り込む戦略
同社共同創業者兼CEOであるRomain Chayotと、会長のYvan Chardonnensは、今回の調達を受けて、増大する世界のタンパク需要に対し、より循環的で持続可能な生産手法を提示していく方針を示した。コメントでは、精密発酵の技術革新と乳業の既存知見を組み合わせることで、食品産業とディープテックを接続していく姿勢が打ち出されている。
また両氏は、今回の投資家構成について、BelやDanoneのような大手食品企業の参画が自社技術への評価を裏付けるものだと位置づけた。そのうえで、強固な技術障壁を土台に事業展開を加速し、欧州の食料主権強化にも貢献していく考えを示している。単なる新素材企業ではなく、産業基盤の再設計に踏み込む構想がうかがえる。
参考文献:
※1:Standing Ovation lève $34,2 millions pour la commercialisation à grande échelle de sa technologie de rupture( リンク)
※2:BEL AND STANDING OVATION REVOLUTIONIZE THE VALORIZATION OF DAIRY CO-PRODUCTS( リンク)
※3:同社HP( リンク)
【世界のフードテックの動向調査やコンサルティングに興味がある方】
世界のフードテックの業界動向調査、技術調査、新規事業機会の探索、参入戦略立案、パートナー探索などに興味がある方はこちら。
先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら
CONTACT
お問い合わせ・ご相談はこちら