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AIを用いて研究開発を高速化するLila Sciences社がシリーズAで3億5000万ドルを調達

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Lila Sciencesは、AIとロボティクスを融合した“科学自動化プラットフォーム”を開発する米スタートアップ。AIが仮説立案から実験、解析までを自律的に行う「AI Science Factory」を通じ、化学・材料・生命科学などの研究を高速化・拡張する。膨大な実験データをAIが学習することで、従来の人間中心の科学手法を超える“科学的スーパーインテリジェンス”の実現を目指している。

2025年10月、シリーズAで3億5,000万ドルを調達し、累計調達額は5億5,000万ドルに到達。リード投資家は、NVentures(NVIDIA VC部門)、Analog Devices、IQTなどが参加。資金はAI Science Factoryの拡張、外部パートナーへの展開、人材採用に充当。AIを軸に科学研究の再構築を進め、エネルギー・材料・医療分野での応用を狙う。


AIが研究開発を再定義する

科学研究は依然として人手と時間に依存し、実験設計や解析の反復に膨大なコストを要する。新素材や創薬などの分野では、試行錯誤型の研究手法がボトルネックとなり、発見までに数年を要するケースも多い。AIや自動化技術の進化により、科学そのもののスピードとスケールを抜本的に変革できるかが、研究開発産業全体の構造的課題となっている。

同社はAIとロボティクスを統合した「AI Science Factory」により、仮説生成から実験、解析までを自律的に実行。AIがデータを学びながら研究を最適化する仕組みで、発見速度を飛躍的に高める。化学・材料・生命科学などの領域で、従来の人間主導型科学を拡張し、“科学的スーパーインテリジェンス”による研究自動化の新基盤を構築している。


AIとロボティクスによる自律実験プラットフォーム

同社はAIとロボティクスを統合した“自律実験プラットフォーム”を開発しており、AIが仮説立案から実験設計、結果解析までを自動で実行する。実験過程で得られたデータを即座に学習し、次の実験条件を最適化するループ構造を備える点が特徴。これにより研究速度を桁違いに高め、従来数年単位だった発見サイクルを週・日単位へ短縮することを狙う。 

中核技術は「AI Science Factory」と呼ばれる物理・デジタル融合型研究インフラで、ロボティクス、センシング、マルチモーダルAIモデルが一体化。化学反応、材料特性、生命現象などを解析する基盤AI群を搭載し、実験とシミュレーションを往復させる。これにより物理法則とデータ駆動型学習を融合させた“AI科学者”のような機能を実現している。

さらに、クラウド連携型の科学OSを採用し、複数拠点のAI Science Factoryを統合管理。取得データは共通形式で蓄積され、AIモデルが継続的に精度向上を行う。将来的には外部研究機関や企業にもAPIとして提供し、AIが実験を代行・最適化する“科学インフラ・プラットフォーム”としての展開を想定。科学の自動化と民主化を両立する構想を描いている。


AIが科学を動かす時代を目指す

Lila Sciencesは調達資金をもとに、世界最大規模のAI制御実験環境「AI Science Factories」を拡張する。AIが数百万件規模の実験データを生成・解析することで、科学的知能のスケーリング則を確立。生命科学・化学・材料の分野で、従来人間が到達できなかった速度と精度で発見を生み出す“科学的スーパーインテリジェンス”の実装を加速する。

長期的には、科学の限界を押し広げる「AI科学者」を社会に実装することを最終目標に掲げる。AI Science Factoriesを国防、エネルギー、インフラ、医療など国家レベルの課題解決に応用し、科学発見そのものを再定義する基盤を構築。世界中の科学者と連携し、“AIが科学を動かす時代”の到来を現実のものとする方針を打ち出している。


参考文献:
※1:Announcing Lila’s $350M Series A and Incredible Partners on Our Mission(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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