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宇宙輸送開発の米Impulse SpaceがシリーズCで429億円を調達。SpaceX元CTOが創業者

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米国の宇宙輸送インフラ開発スタートアップであるImpulse Spaceは2025年6月3日、シリーズC資金調達ラウンドでの$300m(429億円)の確保を発表した。

Impulseは、SpaceXの創業メンバーでありCTOを務めたTom Mueller氏が創業者兼CEOである。2021年、カリフォルニア州で設立した。

MEO以上の軌道にも対応できる輸送機を開発

近年、Impulseに限らず宇宙輸送関連のスタートアップが目立つ。とりわけ見られるのが、低軌道(LEO)への人工衛星投入を担う企業だ。背景には、低コストでの輸送が可能である上、Starlinkに代表されるようなLEO上の人工衛星を介した通信が構想されており、需要が見込めることがある。

ImpulseもLEOへの輸送を行う。しかし、そればかりでなく中軌道(MEO)や静止軌道(GEO)、さらにGEOの先までの輸送を狙う。現に、2023年より実証運用されているImpulseのMiraという軌道間輸送機は、LEOからGEOの先までの利用を想定するものだ。

なお、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、LEO、MEO、GEOの高度は次の通りとなる。

軌道

高度

LEO

〜2000キロメートル

MEO

2000〜3万6000キロメートル

GEO

3万6000キロメートル

 前述のMiraは、ペイロードに最大300キログラムを搭載可能。GEOで運用する場合の寿命は、5年としている。

また、ImpulseはHeliosと名付けられたキックステージを開発。キックステージとは、人工衛星を軌道に投入するため最後に用いられる推進装置のことだ。Heliosは、MEO以上の軌道投入に利用できる。

当初、ImpulseはHeliosの初飛行を2026年とし、同年に行われるFalcon9の3回分の打ち上げを確保したと発表していた。これは、2024年に締結したSpaceXとの契約によるものだ。

しかし、計画に遅れが出ているようで、シリーズC完了を発表する直前の2025年5月22日、ルクセンブルクの人工衛星関連企業であるSESとの契約を発表した際、「最初のミッションは2027年」と明らかにした。

ここまで取り上げたMira、Heliosを利用したビジネスは、「GEOライドシェア」と名付けられている。GEOライドシェアは、人工衛星を打ち上げたい企業にHeliosの輸送機のペイロードを販売。現行では数週間〜数カ月かかるGEOへの人工衛星投入を、24時間以内に行えることをアピールする。

GEOライドシェアも2027年の開始を目指す。

Airbus Venturesが参加

シリーズCは、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。他に参加した投資家として、Airbusのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるAirbus Venturesが存在する。調達した資金は、人員の増強、研究開発、生産拡大に活用するという。

CEOのMueller氏は、「われわれは、スピーディーな製造、飛行の成功を証明した。今、市場から、さらなるニーズを寄せられている」とコメントした。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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