音と振動で牛の行動を制御するニュージーランドのHalter社が2億2000万ドルの資金調達を完了
ニュージーランド発のアグリテック企業Halterは2026年3月25日、シリーズEで2.2億ドルを調達し、評価額が20億ドルに到達したと発表した。ラウンドはFounders Fundが主導し、既存投資家であるBlackbird、DCVC、Bond、Bessemer Venture Partners、NewView Capitalなどが参加した。調達資金は既存市場での導入拡大と、欧州を含むグローバル展開の加速に充てられる。
同社は、GPS搭載・太陽光充電式のスマート首輪と専用アプリを組み合わせ、物理フェンスなしで牛群を管理する「バーチャルフェンシング」を提供する。農家はスマートフォン上で放牧エリアを設定し、牛の移動や囲い込みを遠隔で制御できる。
現在同社はニュージーランド、オーストラリア、米国で2,000以上の農家に導入され、累計100万台のデバイスを販売。米国市場では2024年の参入以降、ユーザーによって数万マイル規模の仮想フェンスが構築されている。
労働力不足が進む畜産において、行動制御インフラとして台頭
今回の資金調達は、仮想フェンスの普及ではなく、牧場のオペレーションそのものをソフトウェアで再設計する企業への評価と捉えるべきだ。背景には放牧型畜産における構造課題がある。畜産は依然として労働集約的な産業であり、特に放牧型では牛の移動管理やフェンス維持など人手依存の作業が多い。こうした状況の中、OECDも農業分野において労働力不足や技能ギャップの拡大を指摘しており、人手とスキルの両面で制約が強まっている。さらに、畜産は環境負荷や土地利用の最適化といった圧力にも直面している。
同社は牛の行動を遠隔から制御することで、従来フェンスに依存していた放牧管理をソフトウェア上の操作に置き換える。これにより、放牧設計や労働動線、土地利用は柔軟に設計・変更可能となる。
同社が高い評価を得た背景には、この“行動制御”を起点に、日々の放牧設計や労働動線、土地利用といった運用そのものが同社のシステムに組み込まれていく構造がある。一度導入されると、これらの運用を他の手段に置き換えることは容易ではなく、継続的に利用される基盤となる。
音や振動によって牛の行動を制御
同社のシステムは、牛に装着するGPS内蔵のスマート首輪、牧場内に設置する通信インフラ、そして管理用ソフトウェアの3層で構成される。農家はアプリ上で仮想的な放牧エリアを設定し、その情報がネットワーク経由で各個体に送信されることで、物理フェンスなしに群れを管理できる。
特徴的なのは、行動制御の手法にある。牛が設定された境界に近づくと、まず音によって進行方向を誘導し、必要に応じて振動や軽微な電気刺激を用いる。このプロセスを通じて牛が条件反射的に行動を学習するため、継続利用時には主に音のみで制御が可能になる。すなわち本システムは、外部から直接動かすのではなく、行動ルールを学習させることで群れ全体を制御する仕組みといえる。
さらに、位置情報や行動データは継続的に蓄積され、放牧設計や群れの移動、土地利用の最適化に活用される。これにより、従来は人手と経験に依存していた牧場運営が、データに基づく運用へと移行することができる。
グローバル展開と運用データの蓄積で成長を加速
今回の調達についてHalterのCEO Craig Piggottは「世界中の農家がより持続可能で生産的な運営を実現できるよう支援する」と述べており、単なる製品展開ではなく牧場運営そのものの変革を志向している。
実際、同社は3カ国で2,000以上の農家に導入され、累計100万台のデバイスが稼働、米国でも6万マイル以上の仮想フェンスが構築されている。プロダクトは実証段階を超え、スケールフェーズに入ったといえる。今後はグローバル展開とデータ蓄積を進めることで競争優位を強化するとみられる一方、各国の規制や受容性への対応が普及の鍵となる。
参考文献:
※1:Halter raises $220M in Series E to accelerate global expansion of virtual fencing( リンク)
※2:同社HP( リンク)
※3:Attracting new farmers for the future of agriculture( リンク)
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