圧力地熱システムを開発するSage Geosystemsが9700万ドルを調達し、世界初の商用システムの建設へ
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米国のSage Geosystemsは、独自のPressure Geothermal(圧力地熱)技術により、従来の地熱では活用が難しかった地下熱資源を電力と長時間エネルギー貯蔵に転換するスタートアップだ。地下の「熱」に加えて「圧力」を利用することで、地理的制約を受けにくい安定電源の供給を可能にする。AIデータセンターなど、24時間稼働を要する電力需要への対応も視野に入れている。
Sage Geosystemsは、9700万ドル超のSeries B資金調達を完了した。ラウンドはOrmat TechnologiesとCarbon Direct Capitalが共同リードし、複数の気候・エネルギー系投資家が参加している。調達資金は、同社のPressure Geothermal技術を用いた世界初の商用圧力地熱発電施設の建設・展開に充てられる。Ormatとの提携により、既存の地熱発電所での商用稼働を予定している。
同社プレスリリースより引用
地熱が再び注目される理由
再生可能エネルギーの導入が進む一方で、電力システムでは常時・安定して供給できる低炭素電源(clean firm power)の不足が課題として浮上している。太陽光や風力は変動が大きく、蓄電池を組み合わせても長時間の安定供給には限界がある。
電力需要が拡大する局面では、天候に左右されない基盤電源の確保が不可欠となる。このため、発電量を制御でき、24時間稼働可能な電源の価値が相対的に高まっている。
こうした文脈で地熱は再評価されているが、従来型地熱は自然条件への依存が大きく、展開可能な地域が限られてきた。結果として、安定電源としての技術的価値に比して、導入規模は伸び悩んできた。
米国エネルギー省(DOE)も、次世代地熱に関する調査の中で、従来地熱の制約を超える技術が将来的に大規模なクリーン電源となり得ると整理している。安定電源としての地熱を、いかに汎用的な形に転換できるかが共通課題となる中で、Pressure Geothermalはその一つの解として位置づけられる。
地熱を「設計できる電源」に変える技術
同社のPressure Geothermal技術は、地熱を単なる発電技術ではなく、発電と長時間蓄エネを兼ねるエネルギーシステムとして設計している点に特徴がある。公式説明では、従来のホットドライロック地熱と比べて25〜50%高いネット出力(モデル推定)を掲げ、油ガス産業の既存機器を活用することで24〜36か月での新規電源立ち上げが可能としている。
発電側では、地下に人工的な貯留構造(LUNG fracture)を形成し、2本の井戸(injector/producer)で高圧水を循環させて熱を回収する。地上では、従来のORCに代えてsCO₂タービンを採用し、効率向上と出力増加を狙う設計だ。井戸は24時間運用の中で役割を入れ替えるとされ、地下・地上を一体で最適化する思想が示されている。
加えて同社は、同じ圧力概念を用いたEarthStore™で蓄エネにも展開する。単一井戸に高圧で水を貯め、放電時にはPeltonタービンで発電する方式で、8時間超から複数日規模の長時間エネルギー貯蔵を想定する。発電と蓄エネを同一技術基盤で扱う点が、同社の技術的な立ち位置を特徴づけている。
商用発電所の立ち上げと長時間蓄エネの実装
当面の最優先は、Pressure Geothermalの商用発電設備を実際に立ち上げることにある。同社は今回の資金調達を、初の商用施設の建設・展開に投入し、既存のOrmat発電所での商用稼働を足場にスケールへ進む計画だ。
ここで問われるのは、モデル上の優位(例:ネット出力25〜50%)を、現場の運転・工期・コストで再現できるかである。並行して、技術を「発電だけ」に閉じず、地上設備(sCO₂タービン)と地下構造を一体で最適化する方針を明確にしている。
公式の技術説明では、ORCに代わるsCO₂タービンで効率と出力を引き上げる設計や、井戸の役割を入れ替えながら24/7で運用する考え方を掲げる。また、蓄エネ側はEarthStoreとして8時間超〜複数日の長時間領域を想定しており、商用発電の立ち上げと並走して“発電+長時間”のパッケージ化を進める段階に入る。
参考文献:
※1:Sage Geosystems Raises Over $97 Million To Deploy World’s First Commercial Pressure Geothermal Power Generation Facility( リンク)
※2:Pathways to Commercial Liftoff: Next-Generation Geothermal Power(リンク)
※3:同社HP( リンク)
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