Neurableは、非侵襲型のブレインマシーンインターフェース(BMI)技術を開発する米国発スタートアップである。脳波などの微弱な脳信号を小型センサーで取得し、独自のAI解析によって集中力や注意状態、認知負荷をリアルタイムに可視化する点が特徴。BMIを研究用途にとどめず、ヘッドホンなど日常的に使われるデバイスへ組み込むことで、「日常使いできるブレインマシーンインターフェース」の実現を目指している。
同社は、シリーズAラウンドにおいて3,500万ドル(約50億円)を調達した。本ラウンドには複数の投資家が参加し、同社の累計調達額は約6,500万ドルに達した。調達資金は、BMI技術を中核とするNeurable AIプラットフォームの高度化、対応デバイスの拡充、ならびに消費者向け・研究向け双方での市場展開に充てられる予定である。BMIを日常技術へと普及させるための重要な成長資金と位置付けられている。
BMIを研究室から日常利用できる技術へ
BMI技術は注目を集めてきたが、専用機器の装着負荷や計測精度のばらつきにより、利用シーンは研究・専門分野に限定されてきた。結果として、一般ユーザーが日常的に使う技術としての実用性や価値が十分に伝わらず、普及が進んでいない現状がある。
同社は、ヘッドホンなど日常的に使われるデバイスにBMIを組み込むことで、専用機器の装着や複雑な操作を不要にした。取得した脳信号は独自AIで解析され、ノイズや個人差を補正したうえで集中度などの指標として提示される。これにより、BMIを研究向けの特殊技術から、一般ユーザーが継続的に使えるツールへと位置付けを広げている。
非侵襲脳信号センシングとAIを活用
同社のBMI技術は、非侵襲型の脳信号センシングを前提に、日常利用を想定した小型センサーで脳活動を取得する点に特徴がある。医療用途で用いられる大規模なEEG装置を必要とせず、ヘッドホンなど既存デバイスに組み込めるため、ユーザーは特別な準備をすることなく自然な状態で脳信号を計測できる。日常環境下での利用を前提に設計されている点が、従来型BMIとの大きな違いである。
取得された脳信号は、同社独自のAIアルゴリズムによって解析される。日常環境ではノイズ混入や個人差が避けられないが、AIは継続的な使用データを通じてユーザーごとにモデルを最適化し、安定した解析を可能にする。これにより、非侵襲型BMIで課題とされてきた信号のばらつきを抑え、実用レベルの解析精度を確保している。
解析結果は、集中度や認知状態といった直感的に理解しやすい指標として可視化され、アプリや他サービスと連携して提供される。複雑な脳信号を専門知識なしで扱える形に変換することで、BMIを研究用途の技術から、一般ユーザーが継続的に利用できるプロダクトへと転換している点が同社の技術的中核である。
脳信号解析を中核にBMIの応用領域を拡張
同社は今回調達した資金を活用し、特許取得済みの脳信号解析プラットフォーム「Neurable AI」を中核に、BMI技術の商用展開を本格化させる方針だ。BMI内蔵ヘッドホンやアプリを起点に、集中状態や認知負荷をリアルタイムで把握できる機能を高度化し、日常環境下で継続的に利用できるBMIの確立を目指す。
こうした取り組みの背景には、BMIを研究用途に閉じた技術ではなく、誰もが自然に使えるインターフェースへ進化させたいという考えがある。CEOのRamses Alcaide氏は、脳の状態理解を歩数や心拍の確認と同じくらい日常的な行為にしたいと述べており、同社は応用領域の拡大や外部連携を通じてBMIを基盤技術として定着させる方針だ。
参考文献:
※1:Neurable Raises $35 Million Series A to Accelerate Deployment of Everyday Brain-Computer Interface Technology( リンク)
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