グラフェン製造のGMGが高性能アルミニウムイオン電池を発表
GMG(Graphene Manufacturing Group)はオーストラリアのブリスベンに拠点を構える企業だ。同社は採掘されたグラファイトからではなく、天然ガス(メタン)からグラフェンを製造する独自の技術を開発し、現在、グラフェン製造・提供を主事業としている。
同社は新規事業として、同社が製造したグラフェンを使った新しいアルミニウムイオン電池を、オーストラリア政府から助成を受けてクイーンズランド大学と共同で研究開発している。今回、GMGが発表したのは、クイーンズランド大学が考案した技術を使った、グラフェン正極・アルミニウム負極の新しい電池だ。
アルミニウムイオン電池とは?
アルミニウムイオン電池とは、正極・負極間でのアルミニウムイオンの移動を利用して充放電を行う二次電池である。通常、リチウムイオン電池ではリチウムイオンの移動を利用して充放電を行っているのであるが、リチウムイオンがアルミニウムイオンに置き代わったものだ。
アルミニウムイオン(Al3+)は3価のイオンであり、1価のリチウムイオン(L+)に対して、体積あたりの容量が高く、負極に使うことで高容量化が期待される。
金属電極の特性
Li | Na | Mg | Al | |
価数 | 1 | 1 | 2 | 3 |
電気容量[mAh/g] | 3860 | 1170 | 2200 | 2978 |
電気容量[mAh/cm3] | 2060 | 1136 | 3830 | 8042 |
一方で、3価のカチオンによる電極へのインターカレーション(電極の層状構造を維持したままイオンが脱着すること)は、電極の劣化や充放電サイクルの低下に繋がりやすく、過去からアルミニウムイオン電池に取り組む研究は数多くあったが、実用化ができていないという現状となっている。
表面穿孔グラフェンをカソードに適用
今回、クイーンズランド大学が開発した技術は、3層グラフェンナノシートを温和な温度(400°C)下で熱還元穿孔(TRP)し、表面穿孔グラフェンにすることで、アルミニウムイオンをグラフェン表面に空いた穴から内部に取り込む構造になっている。
インターカレーションの問題を、3層であること、平面内ナノスケールの穴(Nanopore)、50%を超える層間間隔によって解決しようとしているようだ。
この表面穿孔3層グラフェン正極、アルミニウム負極によって製作されたコイン電池は、7,000W/kgという優れた出力密度と、充放電サイクル2,000回を超えても性能の低下は起こらないことが示された。なお、重量エネルギー密度は150~160Wh/kgとなっている。これは、過去にあったアルミニウム負極とカーボン正極の組み合わせの研究と比べても優れた数値であると同社は主張している。
なお、現時点では公称電圧は1.7Vとなっており、まだリチウムイオン電池に比べて電圧が低いため、現在、他の電池を代替できるように電圧を上げられるように開発を進めているという。
このグラフェンを使ったアルミニウムイオン電池は、今後6か月以内にコインセルの顧客テスト用プロトタイプを製作し、18か月以内に、スマートフォンやラップトップ向けのパウチ型の商用プロトタイプを製作する予定だ。
今回参考のプレスリリースはこちら
参考文献:
1) The current state and future of aluminum rechargeable battery, Masanobu CHIKU and Hiroshi INOUE, Journal of The Japan Institute of Light Metals, Vol. 65, No. 10 (2015), 503–507
2) GMG | Graphene Aluminum Ion Battery Technology | KE Report Interview (April 29th, 2021)
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